【75歳からの保険料】後期高齢者医療の計算方法と軽減制度を徹底解説

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75歳になると加入する後期高齢者医療制度の保険料は、「均等割額」と「所得割額」の合計で計算されます。均等割額は加入者全員が等しく負担する定額部分であり、所得割額は前年の所得に応じて負担する変動部分です。この計算式は全国共通ですが、具体的な金額や料率は都道府県ごとに異なるため、お住まいの地域によって年間保険料に差が生じます。

後期高齢者医療制度は、75歳以上の高齢者および65歳から74歳で一定の障害認定を受けた方を対象とする独立した医療保険制度です。団塊の世代が全員75歳以上となる「2025年問題」を経て、制度は大きな転換期を迎えています。令和6年度(2024年度)から令和7年度(2025年度)にかけて実施された保険料改定では、全世代型社会保障制度への転換を意図した抜本的な構造改革が行われました。特に、少子化対策としての「出産育児一時金」の財源の一部を後期高齢者医療制度が負担する仕組みが導入され、保険料の算定根拠となる賦課総額が増加しています。この記事では、後期高齢者医療保険料の計算方法から軽減制度、納付方法まで、制度の全体像を詳しく解説します。

目次

後期高齢者医療制度の保険料を決める「広域連合」とは

後期高齢者医療制度の保険料を理解するうえで最も重要な前提は、運営主体が市町村ではなく、都道府県ごとに設置された「後期高齢者医療広域連合」であるという点です。国民健康保険が市町村単位で運営され、自治体ごとに大きく保険料が異なるのに対し、後期高齢者医療制度では、原則として同一都道府県内であれば、大都市に住んでいても山間部の町村に住んでいても、適用される「保険料率」は均一となっています。

この広域連合は、2年ごとに当該地域の医療費見込みと被保険者数の推計に基づき、条例によって保険料率を決定します。したがって、保険料計算式の大枠は全国共通ですが、具体的な「均等割額」や「所得割率」の数値は、居住する都道府県によって異なります。これは、地域ごとの医療費水準が保険料に反映される仕組みとなっているためであり、一般に西日本が高く東日本が低い傾向にある「西高東低」の医療費格差が存在します。

75歳以上の保険料計算方法の基本「均等割」と「所得割」

年間保険料額は、被保険者一人ひとりに対して個別に算定されます。夫婦であっても世帯単位で合算して請求されるのではなく、夫は夫の収入に基づいて、妻は妻の収入に基づいて計算され、それぞれに通知が届きます。

保険料の計算式は、大きく二つの要素の合計によって成り立っています。一つ目は「均等割額」と呼ばれる部分で、加入者全員が等しく負担する「基本料金」に相当します。二つ目は「所得割額」と呼ばれる部分で、前年の所得に応じて負担する「従量料金」に相当します。つまり、「年間保険料額 = 均等割額 + 所得割額」という計算式になります。

ただし、この合計額には年間の上限額(賦課限度額)が設けられており、どれほど高額な所得があっても、この上限を超えて請求されることはありません。令和6年度(2024年度)以降、この賦課限度額は80万円に引き上げられました。

所得割額の計算方法と「賦課のもととなる所得金額」

所得割額を算出するための第一歩は、基準となる所得金額を確定することです。ここで用いられるのは、地方税法上の「総所得金額等」から「基礎控除額」を差し引いた金額であり、専門的には「賦課のもととなる所得金額」と呼ばれます。

この計算プロセスを順を追って解説します。まず、前年(1月から12月まで)の収入から、必要経費や公的年金等控除、給与所得控除を差し引いた金額を算出します。年金収入のみの場合、「年金収入額 - 公的年金等控除額 = 雑所得」となります。65歳以上の場合、年金収入が330万円未満であれば、控除額は一律110万円です。給与収入がある場合は、「給与収入額 - 給与所得控除額 = 給与所得」となります。その他の所得として、不動産所得、事業所得、株式譲渡所得などが合算されます。なお、退職所得は保険料計算の対象外となります。また、障害年金や遺族年金などの非課税所得も、この計算には一切含まれません。

算出された総所得金額等から、全ての納税者に適用される「基礎控除」を差し引きます。基礎控除額は、合計所得金額が2,400万円以下の大多数の方については43万円です。

計算例として、年金収入が200万円の方の場合を見てみましょう。公的年金等控除(110万円)を引くと所得は90万円になります。そこからさらに基礎控除(43万円)を引いた「47万円」が、保険料計算に使われる「賦課のもととなる所得金額」となります。こうして導き出された金額に、各広域連合が定めた「所得割率」を掛け合わせることで、所得割額が決定します。

令和6・7年度の所得割率引き上げと地域差

令和6年度(2024年度)から令和7年度(2025年度)にかけての制度改正では、現役世代の負担軽減と出産育児一時金支援への拠出のため、全国的に所得割率が引き上げられました。全国平均の所得割率は、令和4・5年度の9.34%から、令和6・7年度は10.21%へと上昇しています。

地域ごとの具体例を見ると、その上昇幅は一様ではありません。東京都は9.67%、大阪府は11.75%、京都府は10.95%、沖縄県(糸満市)は11.60%、鳥取県は10.64%となっています。このように、医療費の高い地域では11%を超える高い料率が設定されており、同じ年金収入であっても居住地によって年間数万円単位の差が生じる可能性があります。

令和6年度に実施された激変緩和措置の内容

令和6年度(2024年度)には、料率の一斉引き上げによる家計への急激な衝撃を和らげるため、所得が一定以下の方に対して本来よりも低い優遇された所得割率が適用される「激変緩和措置」が導入されました。

この措置の対象者は、「賦課のもととなる所得金額」が58万円以下の方でした。これは、年金収入のみの単身世帯で換算すると、年金収入が約211万円以下の方が該当しました。対象者については、令和6年度に限り、正規の所得割率ではなく緩和用所得割率が適用されました。

具体的な例として、京都府では正規率10.95%に対して緩和対象者は10.11%に軽減されました。鳥取県では正規率10.64%に対して緩和対象者は9.83%となりました。埼玉県では正規率9.03%に対して緩和対象者は8.42%となりました。

この措置により、年金収入が平均的な水準にある多くの高齢者において、令和6年度の負担増は比較的緩やかなものとなりました。しかし、令和7年度(2025年度)からはこの緩和措置が終了し、全員が正規の高い料率に移行しています。そのため、令和7年4月以降に実質的な負担増を感じた方が多くなっています。

均等割額の設定と令和6・7年度の引き上げ

均等割額は、所得の有無にかかわらず負担する定額部分です。こちらも医療費の増加に伴い引き上げが行われました。全国平均では、令和4・5年度の47,777円から、令和6・7年度は50,389円へと増加しています。

地域別に見ると、東京都は47,300円(+900円)、京都府は56,340円、大阪府は57,172円となっています。このように、均等割額も都道府県によって異なり、医療費水準の高い地域ほど高額になる傾向があります。

低所得者向け軽減制度「7割・5割・2割軽減」の仕組み

均等割額は低所得者にとって逆進的な負担となるため、世帯の所得水準に応じて7割、5割、2割の減額を行う法定軽減制度が設けられています。この判定は、被保険者本人だけでなく、世帯主および同一世帯の被保険者全員の所得を合算して行われます。

令和6年度からは、物価高騰などの経済情勢を踏まえ、5割軽減と2割軽減の対象となる所得基準額が引き上げられ、より多くの方が軽減を受けられるように改正されました。

7割軽減は最も所得が低い層を対象としています。世帯内の総所得金額等の合計が基礎控除額(43万円)を超えない世帯が該当します。世帯内に給与所得者等(一定以上の給与や年金を受け取っている人)が2人以上いる場合は、基準額が「43万円 + 10万円 × (給与所得者等の数 - 1)」に緩和されます。これにより、本来約5万円の均等割が1万5千円程度にまで圧縮されます。

5割軽減は中間的な低所得層を対象としています。判定式における被保険者数に乗じる金額が30.5万円へと改正されました。判定式は「43万円 + (30.5万円 × 被保険者数) + 10万円 × (給与所得者等の数 - 1)」以下であることです。

2割軽減は軽減の境界層を対象としています。被保険者数に乗じる金額が54.5万円から56万円へと引き上げられました。判定式は「43万円 + (56万円 × 被保険者数) + 10万円 × (給与所得者等の数 - 1)」以下であることです。

軽減判定における所得計算の特殊ルール

軽減判定に用いる「所得」には、保険料計算(所得割)とは異なる特殊な計算ルールが存在します。ここを誤解すると、自分が軽減対象かどうかを見誤る原因となります。

65歳以上の公的年金所得控除(高齢者特別控除)として、軽減判定の際に限り、65歳以上の方の公的年金等にかかる雑所得から、さらに15万円を差し引いて判定します。これにより、年金収入が単身で約168万円程度までであれば、他の所得がなければ7割軽減に該当する可能性が高くなります。この計算は、基礎控除43万円+公的年金控除110万円+特別控除15万円=168万円という式に基づいています。

事業専従者控除については、自営業などで家族従業員への給与を経費にする「専従者控除」は、軽減判定では適用されません。専従者給与として支払った額を事業主の所得に戻して判定します。また、分離譲渡所得の特別控除も適用されず、土地や建物を売った際の譲渡所得に対する特別控除は控除前の金額で判定されます。

賦課限度額(年間上限)80万円への引き上げと経過措置

高所得者層に対する保険料の年間上限額(賦課限度額)も、令和6年度(2024年度)の改正で大幅に見直されました。改正前は66万円でしたが、改正後は80万円となり、14万円の引き上げが行われました。この引き上げは、主に年収1,000万円を超えるような層に影響を与えますが、制度の持続可能性を高めるために負担能力のある層に応分の負担を求めるものです。

限度額の一挙な引き上げを緩和するため、特定の年齢層に対しては令和6年度限定の経過措置が設けられました。生年月日が1949年(昭和24年)3月31日以前の方、つまり令和6年度中に75歳に到達するのではなく、すでに75歳以上で制度に加入していた方々が主対象となり、令和6年度の限度額は73万円に据え置かれました。令和7年度(2025年度)以降は経過措置が終了し、全対象者が80万円となっています。

一方で、令和6年度中に新たに75歳になり加入した方(昭和24年4月1日以降生まれの方)については、原則として最初から限度額80万円が適用されました。

元被扶養者(旧被扶養者)に対する軽減措置と「2年縛り」

75歳になる前日まで、会社の健康保険(組合健保や協会けんぽ、共済組合など)の被扶養者であった方は、それまで自分で保険料を払う必要がありませんでした。後期高齢者医療制度への移行に伴い、突如として保険料負担が発生することを防ぐため、特別な軽減措置が設けられています。これを「元被扶養者軽減」と呼びます。

所得割額については、当面の間、所得にかかわらず全額免除(0円)となります。均等割額については、加入した月から2年間(24ヶ月間)に限り、5割軽減(半額)となります。

この「均等割額の5割軽減」には期間制限があることが重要なポイントです。かつてはこの軽減措置に期間制限はありませんでしたが、制度改正により「資格取得後2年を経過する月まで」と明確化されました。2年経過後は均等割額の軽減は消滅し、満額の支払いとなります。ただし、世帯の所得が低い場合は、所得に応じた軽減(7割・5割・2割)が適用される可能性があります。元被扶養者軽減(5割)よりも、所得基準による軽減(7割)の方が有利な場合は、有利な方が優先して適用されます。

保険料の納付方法「特別徴収」と「普通徴収」の違い

後期高齢者医療保険料の徴収方法は、高齢者の利便性と徴収の確実性を確保するため、原則として公的年金からの天引き(特別徴収)が採用されています。

特別徴収の対象条件は、年額18万円以上の年金を受給しており、かつ介護保険料と後期高齢者医療保険料の合算額が年金受給額の2分の1を超えない場合です。徴収スケジュールは、年金支給月である偶数月(4月・6月・8月・10月・12月・2月)に天引きされます。4月・6月・8月は「仮徴収」として、前年の所得が確定していないため、前年度の2月の徴収額と同額などが仮に徴収されます。10月・12月・2月は「本徴収」として、6月に確定した年間保険料額から仮徴収分を差し引いた残額を3回に分けて徴収し、精算します。

一方、以下のケースでは年金天引きではなく、納付書や口座振替で自分で納める「普通徴収」となります。年金受給額が年額18万円未満の方、介護保険料との合算が年金額の半分を超える方が該当します。また、年度の途中で75歳になった方は、75歳になった直後は年金天引きの手続きが完了するまで(半年〜1年程度)一時的に納付書で支払う必要があります。他市町村から転入した方も転入直後は一時的に普通徴収となります。

口座振替への変更による世帯全体の節税テクニック

年金天引きはデフォルトの設定ですが、多くの自治体では申し出により「口座振替」への変更が可能です(納付状況が良い場合に限る)。ここには重要な節税テクニックが存在します。

年金から天引きされている場合、その保険料は「年金受給者本人」が支払ったものとみなされ、本人の確定申告でのみ控除対象となります。しかし、本人の年金収入が少なく非課税である場合、控除のメリットはありません。

もし、生計を一にする現役世代の子どもや配偶者がいる場合、口座振替に変更し、その家族の口座から保険料を支払えば、その家族の確定申告(または年末調整)において「社会保険料控除」として全額を経費計上できます。これにより、所得税率が高い現役世代の税金を減らすことができ、世帯全体の手取りを増やせる可能性があります。

キャッシュレス納付の普及と注意点

普通徴収の場合、近年ではコンビニ払いや銀行窓口に加え、クレジットカード払い、PayPayやLINE Payなどのスマートフォン決済(モバイルレジ)に対応する自治体が増えています。

メリットとしては、自宅にいながら納付でき、ポイント還元等が受けられる場合があります。デメリットとしては、領収書が発行されない場合が多く、手元に紙の記録が必要な場合は注意が必要です。また、クレジットカード払いにはシステム利用料(手数料)がかかる場合があるため、自治体の規約を確認する必要があります。

なぜ地域によって保険料が違うのか

後期高齢者医療制度は都道府県ごとの「独立採算」に近い形で運営されています。そのため、以下のような要因が保険料に直結します。

最大の要因は一人当たり医療費の差です。一般に、西日本の県(福岡、高知、大阪など)は、人口一人当たりの入院日数や受診回数が多い傾向にあり、医療費が高くなります。これが保険料を押し上げる最大の要因となっています。

収納率の差も影響します。保険料の未納が少ない地域では財政が安定し、保険料の上昇を抑えられます。また、基金の取り崩し状況も関係しており、広域連合が積み立てている準備金(財政安定化基金)を取り崩して保険料上昇を抑制している場合、その取り崩し可能額によって年度ごとの保険料が変わります。

2026年以降の後期高齢者医療制度の展望

令和6年度(2024年度)に導入された「激変緩和措置」や「賦課限度額の経過措置」は、あくまで激変を乗り越えるための一時的な防波堤でした。令和8年度(2026年度)以降は、これらの緩和措置が完全に撤廃され、さらに団塊の世代が全て75歳以上に達したことで、医療費総額はピークに向かっています。

現役世代人口の減少(支え手の減少)と高齢者人口の増加(利用者の増加)が同時に進行する中、今後は「負担能力に応じた負担」の原則がさらに強化されることは避けられません。具体的には、金融資産の保有状況を考慮に入れた負担のあり方や、出産育児支援金のような他制度との相互扶助の拡充などが議論の対象となる可能性があります。

後期高齢者医療保険料に関して被保険者が取るべきアクション

制度は複雑化の一途をたどっていますが、被保険者やその家族が取るべきアクションは明確です。

まず、毎年7月頃に届く「保険料額決定通知書」を必ず開封し、算定基礎となる所得金額が正しいか確認することが重要です。次に、世帯の所得状況が変わった(世帯主が退職した、世帯分離をした等)場合、軽減判定(7割・5割・2割)に影響がないか自治体窓口で相談することをお勧めします。

元被扶養者の方は、資格取得から2年経過後の保険料増額に備えて資金計画を立てることが大切です。また、節税の観点から、納付方法(特別徴収か口座振替か)の最適解を家族で話し合うことも検討すべきポイントです。

後期高齢者医療制度の保険料は、制度の持続可能性を確保するために今後も見直しが続くことが予想されます。ご自身の保険料がどのように決定されているのかを正しく理解し、利用可能な軽減制度を漏れなく活用することが、家計を守るうえで重要となります。

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