学校でウサギの飼育が減少している理由は、教員の働き方改革による負担軽減の要請、猛暑という気候変動の影響、子どものアレルギー問題、鳥インフルエンザなどの感染症への警戒、飼育予算の不足、そしてウサギが実は飼育の難しいデリケートな動物であるという認識の広がりなど、複合的な要因が重なり合っているためです。かつて日本の小学校では、校庭の片隅に飼育小屋があり、ウサギやニワトリがいる風景は当たり前のものでした。子どもたちが飼育委員として動物の世話をし、命の大切さや責任感を学ぶ光景は、昭和から平成にかけての学校教育の一場面として多くの人の記憶に残っています。しかし近年、学校からウサギが姿を消しつつあり、飼育小屋は取り壊され、動物飼育そのものを廃止する学校が全国的に増加しています。この記事では、学校でウサギを飼わなくなった背景にある様々な要因について、最新のデータや事例をもとに詳しく解説していきます。

学校でのウサギ飼育の現状と減少の実態
学校でのウサギ飼育は、全国的に明らかな減少傾向にあります。東京23区の各教育委員会への取材調査では、9つの区が「減少傾向にある」と回答しており、残る区の大半は飼育数そのものをカウントしていないことから「分からない」としています。
具体的な減少データ
世田谷区では2012年度に42校で計88匹のウサギを飼育していましたが、2022年度には27校で40匹となり、10年間で約半減しました。滋賀県においても、2014年度に県内の公立幼稚園・小中学校で388匹を飼育していたものが、2023年度には48匹にまで激減しています。
大手前大学教授の中島由佳さんの調査によると、2003年から2012年にかけては93.4パーセントもの小学校が「動物を飼育している」と回答していましたが、2017年から2018年には85.8パーセントまで減少しました。注目すべき点として、鳥類と哺乳類が著しく減少している一方で、魚・両生類・昆虫が13.6パーセントから50.9パーセントまで急増しています。
大阪府教育委員会の調査によれば、ウサギやニワトリなどを飼育する小学校は2007年度には80パーセント近くありましたが、2022年度には20パーセントあまりにまで大きく減少しました。
文部科学省が公立小学校を無作為抽出して行った調査では、回答した1224校中、半数を超える55.0パーセントで学校が動物を所有して飼育していると回答していますが、そのうち哺乳類、鳥類、爬虫類を飼育しているのは41.5パーセントにとどまっています。
学校でウサギの飼育が減少している主な理由
学校でウサギの飼育が減少している背景には、複数の要因が複雑に絡み合っています。ここでは主な理由を詳しく見ていきます。
教員の負担増加と働き方改革の影響
学校でのウサギ飼育が減少している最大の理由は、教員の負担問題です。働き方改革の波が学校現場にも及ぶ中、ウサギやニワトリの世話が教員にとって大きな負担となっています。
練馬区をはじめとする複数の区が「長期休業中の世話など教職員の負担」を減少理由として挙げています。愛知県の公立小学校に勤務する女性教員は「ウサギの世話で土日も学校に通わなければならず、体力的につらい」と述べています。
かつては夏休みなどの長期休暇中に子どもたちが交代で学校に来て飼育小屋の掃除や餌やりを行っていました。しかし、安全上の問題や猛暑の影響で、「子どもだけで学校に来て飼育小屋を掃除させるのは危ないのではないか」という声が高まり、長期休みの飼育は教員が担当する仕事へと変化していきました。
結果として、土日や年末年始、夏休みなどの長期休暇期間中、教員がボランティア的に世話をしている状況が続いており、働き方改革の観点から飼育の見直しが進められています。京都市立境谷小学校の山野真里子校長は「教育活動の中で育てているものなので、教育活動外の時間をどうするかが、働き方改革と大きく影響する」と述べており、夏休み期間中は教員が本来の休暇を取りにくい状況が生じています。
猛暑と気候変動がウサギ飼育に与える深刻な影響
近年の気候変動による猛暑は、学校でのウサギ飼育にとって深刻な問題となっています。ウサギは暑さに対して特に敏感な動物であり、汗腺がほとんどないため体温調節が難しいという特性を持っています。
ウサギにとって快適な気温は15度から21度程度で、26度を超えると熱中症などの健康リスクが高まります。28度から29度を超えると体温調節が難しくなり、30度を超えると熱中症の危険が高まります。わずか20年の間に、東京の8月の日平均気温が3.2度も上昇しており、現在では一日中高温が続くため、ウサギが体温を下げる機会がほとんどなくなっています。
屋外の飼育小屋は、屋根が半透明のトタン製であることも多く、夏は強い日差しが降り注ぎ、金網越しに雨風も吹き込む状態です。エアコンのある室内で飼育されるペットのウサギとは環境が大きく異なり、熱中症で死亡するケースも報告されています。
子どものアレルギー問題への配慮
児童の動物アレルギーの影響も、複数の自治体から指摘されています。ウサギの毛やフケなどがアレルギーの原因となり得るため、アレルギーを持つ児童への配慮から飼育を見直す学校が増えています。
また、動物に触れることで喘息などの症状が悪化する可能性もあり、全ての児童が安心して触れ合える環境を整えることが難しくなっています。アレルギーを持つ児童が増加傾向にある現代では、飼育動物の選定においてもこうした健康上の配慮が求められるようになっています。
鳥インフルエンザの流行と感染症への警戒
2003年に流行が拡大した鳥インフルエンザは、学校での動物飼育に大きな影響を与えました。「学校のニワトリを子どもに接触させるのも控えた方がよいのではないか」という考えから、各自治体や学校で鳥の飼育を控える動きが広がりました。
その結果、感染症への警戒から、ほとんどの自治体では子どもではなく教員が動物の世話をすることになりました。これがさらに教員の負担増加につながり、飼育の継続が困難になる悪循環が生まれました。鳥インフルエンザの影響は直接的にはニワトリなどの鳥類に関するものでしたが、学校での動物飼育全体の見直しにつながるきっかけとなりました。
飼育予算と医療費の確保が困難
動物が病気やケガをした時の医療費などの予算が、大半の自治体で確保されていないことも大きな問題です。愛護団体によると、「学校に聞くと、年に2万円から3万円しか飼育のための予算がない」という声もあり、餌も十分に買えず、治療もできず、放置するしかないケースも発生しています。
ウサギの主食である牧草を与えている学校がほとんどなく、「うさぎの餌は税金で購入しているから、贅沢はさせられない」「牧草はカタログに載っていないから購入できない」といった問題も報告されています。適切な飼育には相応の費用がかかりますが、学校の限られた予算では十分な対応が難しいのが現状です。
ウサギは飼育が難しいデリケートな動物
ウサギはとてもデリケートな動物です。室温が高すぎたり低すぎたりすると、ストレスを感じて病気になってしまうことがあります。環境や温度の変化に弱く、ちょっとしたことがストレスとなって体調を崩してしまう小動物特有の繊細さがあり、初心者や子ども向けのペットとはいえません。
適正温度は18度から24度、湿度は約50パーセントが理想とされています。秋と春は一日の中でも気温が大きく変化し、朝と日中の寒暖差が10度以上あるとウサギがかなりストレスを感じてしまいます。一日の中での寒暖差をできれば6度以内に抑えることが大切です。このように、ウサギを適切に飼育するには専門的な知識と設備が必要であり、学校という環境での飼育には限界があるという認識が広がっています。
学校飼育で起きている多頭飼育崩壊の問題
学校でのウサギ飼育において深刻な問題となっているのが、多頭飼育崩壊です。ウサギは繁殖力が非常に強く、雌雄を分けて飼わなければ無秩序に増え続けてしまいます。1組のペアから1年で300匹から400匹にも増えると言われています。学校が専門的な知識を持たずに飼育しているため、毎年どこかの学校で過剰繁殖による飼育崩壊が起きています。
一部の小学校では、餌を与えられず痩せ細った個体、近親交配によるとみられる奇形、骨盤骨折で下半身不随になったまま放置された個体、そして繁殖が止まらず手に負えなくなる多頭飼育崩壊という問題が発生しています。学校でのウサギの飼育は各学校に任せられており、校長や園長、飼育担当の先生の意識次第で、きちんと飼育するところとしないところがあります。
福岡県久留米市で報告された事例
福岡県久留米市の小学校44校のうち33校が動物を飼育しており、その中の17校がウサギを飼育しています。そこで飼われているウサギの中には、餌を与えられず痩せ細った子、近親交配によるとみられる奇形、骨盤骨折で下半身不随になったまま放置された子などがいることが報告されました。
告発者によると、「うさぎは繁殖力が強く、1組のペアから1年で300から400倍にも増えます。なわばり意識も強く、1羽に対し1ケージ、室内飼育が基本ですが、真夏も真冬も屋外飼育で、昭和の時代からまったく知識がアップデートされていません」と指摘されています。
京都府内の幼稚園で起きた事例
京都府内にある幼稚園では30匹ほどのウサギが一つの小屋で飼われ、近親交配が繰り返されたとみられ、生まれた時から片耳のウサギもいました。小屋の床はコンクリートで、足裏の毛がなくなり、別の子ウサギは足から血を流し、体を赤く染めて横たわっていたという状況が報告されています。
夏休み中の熱中症死亡事例
ある小学校では、夏休みに入る前に、ウサギを心配した子どもや保護者からの預かり申し出を拒んでいたにもかかわらず、夏休みのうちに4分の3のウサギが暑さのために亡くなりました。適切な対応がなされていれば防げたはずの死であり、学校飼育の問題点を象徴する事例といえます。
劣悪な飼育環境の実態
餌は2カ月間切らしていることもあり、空腹でニワトリのケンカが絶えない状況や、野菜が腐っていることも判らず、ウサギに食べさせていた子どもたちの存在も報告されています。腫瘍がありお腹が腫れて、毛が抜け落ちたウサギは治療もされず、空っぽのお皿を噛み続けていたという劣悪な飼育環境が全国各地で報告されています。
温度変化や湿度に弱く、繊細で臆病なウサギは、学校での適正飼育は不可能だという指摘もあります。ウサギやモルモットは室内で飼育し、エアコンやヒーターなどで適正温度の18度から24度、湿度40パーセントから60パーセントを保つ、24時間の温度管理が本来は必要とされています。
ウサギという動物の特性と飼育の難しさ
ウサギを適切に飼育するためには、その動物としての特性を理解することが重要です。学校での飼育が難しい理由は、ウサギの生態的な特徴にも深く関わっています。
温度管理の重要性
ウサギは暑さ寒さともに弱い生き物のため、温度や湿度管理に気を付けて飼育する必要があります。適正温度は18度から24度、湿度は約50パーセントが理想です。
ウサギは体温調節機能が未発達なため、暑さに弱いです。特に高温多湿な環境は、熱中症のリスクを高めます。熱中症になると最悪の場合、死に至ることもあります。夏場は室温を27度以下、湿度は70パーセント以下を徹底することが重要です。冬に快適な室温は22度から24度が目安で、環境の変化に弱いウサギにとって、真冬にペットヒーターだけでは不十分です。エアコンの暖房をつけて、23度くらいに設定することが推奨されています。
| 季節 | 適正温度 | 注意点 |
|---|---|---|
| 春・秋 | 18〜24度 | 寒暖差を6度以内に抑える |
| 夏 | 27度以下 | 湿度70%以下を徹底 |
| 冬 | 22〜24度 | エアコン暖房を推奨 |
電気代とコストの問題
適温を保つためには、エアコンやヒーターなどの家電を常に稼働させておく必要があり、季節によっては電気代がかかります。飼育環境はウサギの命にも関わるため、節電はあまりおすすめできません。学校の飼育小屋にはエアコンが設置されていないケースがほとんどであり、この点からも学校でのウサギ飼育の困難さが浮き彫りになっています。
ウサギの寿命と長期飼育の課題
ウサギの平均寿命は7年から10年とされており、適切なケアと住環境を整えることで、健康で充実した生活を送ることができます。長く付き合う覚悟が必要であり、学校という環境で長期間の飼育を継続することの難しさもあります。教員の異動や担当者の変更によって、飼育の質が大きく変動してしまうリスクも存在します。
学校飼育動物の歴史と日本独自の教育文化
日本における学校での動物飼育には長い歴史があります。昭和の初めから学校や家庭でウサギが多く飼われるようになりました。戦時中は兎の毛皮が兵隊用の防寒着として、肉は食糧として利用価値が高いため、飼うことが奨励されました。
戦後は教育的観点から、学校飼育動物の活用が学習指導要領に位置づけられるようになりました。動物との触れ合いを通じて、命の大切さや思いやりの心を育む情操教育の一環として、学校での動物飼育が推進されてきました。
世界的に見ても珍しい日本の学校飼育
日本は学校教育として動物飼育が行われてきた、世界的に見ても珍しい国です。欧米での動物介在教育の多くは、動物が子どもたちの機能を補い介助することを主目的に導入されてきたのに対し、日本の動物介在教育は学校動物の「世話」を通して、理科的知識等の涵養とともに情操や道徳性を養うことに教育的ねらいを置いてきました。しかし、その独自の教育文化も、社会環境の変化や動物福祉への意識の高まりにより、見直しを迫られています。
学習指導要領における動物飼育の位置づけ
平成23年度から完全実施された小学校学習指導要領においても、動物飼育は生活科、理科、特別活動などの学習内容として取り入れられています。
小学校学習指導要領解説生活編(平成29年7月)によると、飼育する動物としては、身近な環境に生息しているもの、児童が安心して関わることができるもの、えさやりや清掃など児童の手で管理ができるもの、動物の成長の様子の特徴が捉えやすいもの、児童の夢が広がり多様な活動が生まれるものなどが考えられるとされています。
特に2学年間にわたっての継続的な飼育・栽培を行うことが強調されているのは、自然事象に接する機会が乏しくなっていることや生命の尊さを実感する体験が少なくなっているという児童の置かれた現状を踏まえたものです。学習指導要領解説では、管理や繁殖、施設や環境などについて配慮し、地域の専門家や獣医師などの多くの支援者と連携することが求められています。
学校飼育の教育的効果と現実のジレンマ
学校における動物飼育には、教育的な効果があることは確かです。しかし、その理想と現実の間には大きな隔たりがあります。
情操教育への効果
学校における動物飼育は、命の大切さ、愛する心、思いやりの心などの情操教育に効果的であり、児童や生徒の健全な育成に役立つと評価されてきました。児童・生徒が年間を通じて動物を飼育及び観察・記録することは、動物の世話やふれあいから責任感、協調性、自制心、自尊心、価値観の多様性などの心身の健全な発達ならびに豊かな人間性の涵養に寄与すると考えられています。
教科に動物飼育を位置づける学校の児童の作文には、周囲との関わりが書かれ、自他に対する肯定感、共感する心、支援する態度、生命尊重の態度などが表現されていたという研究結果も報告されています。
幼児期における動物との触れ合いの意味
幼児期において自然や身近な動植物との触れ合いが持つ意味は非常に大きいとされています。幼児は自然の偉大さ、美しさ、不思議さや、命の大切さなどを直接触れる体験を通して実感し、心が安らぎ、豊かな感情、好奇心、思考力、表現力等の基礎を培うことができます。
命の教育としての価値
思春期にペットの死を迎えることは、愛する家族の一員を失うという悲しい経験ではありますが、死の受容と望ましい対処のための準備教育として、「命は永遠ではない」ということを学ぶための貴重な機会と捉えることができます。
教育効果と動物福祉のジレンマ
子どもたちが動物に触れ合ったり、飼育したりすることで、命の大切さを学べるといった教育的な効果があることは確かです。しかし、気候変動による環境の変化や教職員の負担軽減などによって、学校で動物を飼うことが年々難しくなっています。
社会がデジタル化していき、動物に触れたことがない子どもが増えている中、学校で動物を飼わなくなると、そうした経験が失われることになります。地域の支援を得ながらできるだけ多くの学校で動物を適切に飼育して、子どもたちの成長に役立てていける環境をつくる必要性が指摘されています。
文部科学省と獣医師会の対応
学校での動物飼育の問題に対して、国や専門家団体も対応を進めています。
文部科学省が2024年に出した通知
文部科学省は2024年に「学校における動物の飼育について」と題する通知を出し、学校で動物を飼育する際に適切な環境と態勢を整えるよう要望しました。この通知では、休日でも清掃や給餌などの管理ができる体制を整えること、獣医師や動物看護師などの指導の下に飼育できるよう努めることなどが挙げられています。
学習指導要領における獣医師との連携
学習指導要領解説書において、学校における動物飼育については地域の獣医師と連携を図ることが求められています。獣医師が小中学校、幼稚園等で飼育している動物の習性、正しい飼い方、接し方、健康管理及び衛生管理等について指導、助言、支援できるような体制作りについて、各地域の実情に合わせて推進することが必要とされています。
日本獣医師会の取り組み
日本獣医師会は「学校飼育動物の診療ハンドブック」を提供しており、ウサギ、モルモット、ハムスター、ニワトリ、カメ、両生類、魚など様々な動物の飼育に関する情報を掲載しています。また、学校における動物飼育は命の大切さ、愛する心、思いやりの心などの情操教育に効果的であるとして、獣医師による支援体制の構築を推進しています。
東京都教育委員会の先進的な取り組み
小学校において児童による継続的な動物飼育を円滑に実施するためには、専門的な知識をもった獣医師等と連携して、よりよい体験を与える環境を整えることが必要です。東京都では「小学校動物飼育推進校」を指定し、獣医師等との効果的な連携の在り方について検討・実践しています。
学校担当獣医師からの専門的な指導・助言を児童、教員、保護者等が受けることで、飼育動物の衛生管理についての理解が深まり、児童が自信をもち、主体的に飼育活動に取り組むことができるようになったという成果が報告されています。
学校飼育廃止を求める署名活動の広がり
2024年9月には、文部科学省初等中等教育局教育課程課に対して、学校でのウサギ飼育廃止を求める署名58,708名分が提出されました。「学校飼育は廃止にし、動物たちは、あたたかい里親に迎えられて穏やかに安心して暮らせることが最善」との声が高まっており、動物福祉の観点から学校飼育動物の制度自体に反対する意見も少なくありません。
命の大切さを学ぶための教育が、かえって動物を苦しめる結果になっては本末転倒であるという考えから、このような署名活動が広がりを見せています。
学校飼育の新しい取り組みと対応策
学校での動物飼育の課題に対して、様々な新しい取り組みが始まっています。
京都市の動物病院での預かりサービス
京都市では、夏休みの最大2週間、ウサギを「動物病院で預かる」という、全国でも珍しい取り組みが始まりました。教員たちが出勤する機会を減らすのが狙いで、市内の小学校や幼稚園合わせて37匹のウサギを受け入れています。
厳しい暑さが続く中、屋外の小屋で過ごすとウサギが熱中症になるリスクがありますが、病院では温度調節が可能で、丁寧に日々の健康管理ができるというメリットもあります。
保護団体による引き取り活動
一般社団法人うさぎとひとの幸せを支える会(ふじみ野うさぎハウス)では、2025年の一大プロジェクトとして、学校で飼育されているウサギの保護と引き取りを最優先で実施することを決定しました。
「飼育をやめたいが、引き取り先が見つからず断念している」「引き取り先があれば飼育終了を検討できる」といった声を受け、学校で飼育されているウサギを無償で引き取り、新しい里親を見つけるサポートを行っています。これまでにも年間300匹以上のウサギを保護・譲渡してきた実績があります。
飼育しやすい動物への移行
最近では、飼育が難しく世話が大変なウサギから、メダカなどの魚類を屋外の池や、教室の水槽で飼うことに移行する学校が増えています。
メダカはとても飼いやすい魚です。体が非常に小さいため、巨大な水槽が必要ありません。特に教室などの限られたスペースで飼育するには非常に大きなメリットがあります。繁殖に挑戦しやすく、5月から9月は産卵シーズンのため、適切な水温と日照時間を確保すれば卵がふ化します。小学5年生になると、メダカを観察する授業を行うこともあり、教育的にも活用されています。
金魚もコツさえつかんでしまえば飼いやすい生き物です。メダカよりもサイズが大きいため、子どもたちにとって飼育をしているという実感も得られやすいとされています。エサやりに関しても、金魚は2日から3日、場合によっては1週間程度はエサをあげなくても問題ないので、休日の餌やりなどで過度に神経質になる必要がありません。
学校でのウサギ飼育の今後の展望
学校での動物飼育を継続していくためには、いくつかの課題を解決する必要があります。
教員の負担を軽減する体制づくり
教員の負担を軽減するための体制づくりが必要です。地域のボランティアや保護者の協力、警備員への委託など、様々な形で世話の分担を検討する学校もあります。休日や長期休業中の世話については、児童や教師、保護者、地域の専門家などによる連携した取組が必要とされています。
獣医師との連携強化
獣医師との連携を強化し、専門的な知識に基づいた適切な飼育環境を整えることも重要です。飼育のための予算を確保し、適切な餌や医療を提供できる体制を整備することが求められています。
獣医師からは「動物の飼い方が良くなっていく中、学校のウサギの飼い方だけがずっと変わらない。何十年も変わらなかったことを変えるのは大きなチャレンジ。だけど飼うことで命の大切さを学ぶなら、室内で飼おう」との提言がなされています。
代替的な教育方法の検討
学校で動物を飼育しなくても、命の大切さや動物への思いやりを学ぶ方法はあります。動物愛護センターや動物園との連携、ゲストティーチャーとして獣医師を招くなど、様々な形で動物と触れ合う機会を設けることも可能です。また、飼育が比較的容易な魚類や昆虫類への移行も一つの選択肢として広がっています。
まとめ
学校でのウサギ飼育が減少している背景には、複合的な要因があります。教員の働き方改革による負担軽減の要請、猛暑という気候変動の影響、子どものアレルギー問題、鳥インフルエンザなどの感染症への警戒、飼育予算の不足、そしてウサギという動物が実は飼育が難しいデリケートな生き物であるという認識の広がり。これらが重なり合い、学校からウサギが姿を消しつつあります。
学校での動物飼育には確かに教育的効果があり、命の大切さや責任感を学ぶ貴重な機会となってきました。しかし、動物福祉の観点や教員の負担、適切な飼育環境の確保といった課題を考えると、従来通りの形での継続は困難になっています。
今後は、獣医師との連携強化や地域のサポート体制の構築、または飼育しやすい動物への移行など、それぞれの学校の状況に応じた対応が求められます。子どもたちの教育と動物の福祉を両立させる新しい形を模索していくことが、これからの課題といえるでしょう。
学校のウサギ小屋という風景は、時代の変化とともに姿を消しつつあります。しかし、それは単なる衰退ではなく、動物との関わり方についてより深く考えるきっかけとも捉えることができます。命の大切さを学ぶ教育が、命を弄ぶ結果にならないために、私たちは新しい時代にふさわしい動物との向き合い方を考えていく必要があるのではないでしょうか。









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