ペロブスカイト太陽電池とは、ペロブスカイトと呼ばれる結晶構造を持つ化合物を光吸収層に使用する次世代の太陽電池です。2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授らによって発明された日本発の技術であり、薄くて軽く、曲げられる柔軟性を持つ点が最大の特徴となっています。2025年は「事業化元年」と位置づけられ、政府による支援強化と国内メーカーによる量産化が本格的に動き出しました。
従来のシリコン系太陽電池では設置が困難だったビルの壁面や耐荷重が低い屋根にも導入できることから、太陽光発電の適用範囲を大幅に拡大する技術として期待されています。さらに、主要原料であるヨウ素は日本が世界第2位の生産量を誇り、経済安全保障の観点からも国産エネルギーとして重要な位置づけにあります。この記事では、ペロブスカイト太陽電池の基礎知識から政府支援の詳細、国内メーカーの量産化動向、そして今後の展望まで包括的に解説していきます。

ペロブスカイト太陽電池とは何か
ペロブスカイト太陽電池は、「ペロブスカイト」と呼ばれる特殊な結晶構造を持つ化合物を材料として使用する革新的な太陽電池です。この名称は、1839年にロシアのウラル山脈で発見された鉱物「灰チタン石(ペロフスカイト)」に由来しています。同じ結晶構造を持つ化合物を光吸収層に使用することから、この名前が付けられました。
製造方法の大きな特徴として、ペロブスカイト結晶と呼ばれる化合物を極薄のフィルムに塗布・印刷する方式が採用されています。この手法により、材料を溶液として塗布することで製造工程が大幅に簡素化され、従来のシリコン系太陽電池と比較して製造コストを約半分に抑えられると見込まれています。
発明の経緯と宮坂力教授の功績
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に桐蔭横浜大学の宮坂力教授と大学院生の小島陽広氏らによって発明されました。宮坂教授は2001年より桐蔭横浜大学大学院工学研究科教授に就任し、2003年頃から色素増感太陽電池の研究に着手しました。この研究の延長線上で、色素に代えてハロゲン化鉛ペロブスカイトを増感剤に使う実験を始めたことが、ペロブスカイト太陽電池の発見につながりました。
宮坂教授は2017年に「クラリベイト・アナリティクス引用栄誉賞」を受賞しています。これはノーベル賞クラスと目される研究者が選出されるものであり、「効率的なエネルギー変換を達成するためのペロブスカイト材料の発見と応用」が高く評価されました。さらに日本学士院賞や2023年度の朝日賞も受賞しており、ノーベル化学賞の有力候補としても世界的な注目を集めています。
ペロブスカイト太陽電池の発電の仕組み
ペロブスカイト太陽電池の基本構造は、ガラスやフィルムなどの基板上に透明電極、電子輸送層、ペロブスカイト層(光吸収層)、正孔輸送層、対極を順に積層した多層構造となっています。太陽光がペロブスカイト層に当たると、光エネルギーによって電子と正孔が生成されます。電子は電子輸送層を通って透明電極へ、正孔は正孔輸送層を通って対極へと移動し、この電荷の移動によって電流が発生する仕組みです。
従来のシリコン系太陽電池の製造には高温処理や真空プロセスが必要であり、設備投資も大きくなります。これに対してペロブスカイト太陽電池は、材料をフィルムなどに塗布・印刷して作ることができるため、製造工程が少なく大量生産が可能となっています。
ペロブスカイト太陽電池のメリットと優位性
ペロブスカイト太陽電池が次世代エネルギー技術として注目される理由は、従来のシリコン系太陽電池にはない複数の優位性を持っているためです。軽量性、柔軟性、低コスト化の可能性に加え、日本にとって経済安全保障上の大きなメリットもあります。
軽量で柔軟な設計が可能
シリコン系太陽電池が重くて厚みがあるのに対し、ペロブスカイト太陽電池は小さな結晶の集合体が膜になっているため、折り曲げやゆがみに強く、軽量化が実現できます。厚さは従来のシリコン太陽電池の100分の1程度にまで薄くでき、フィルム型の製品では厚さわずか約1mm程度となっています。
この特性により、従来のシリコン系太陽電池では設置が困難だったビルの壁面、耐荷重が低い屋根、曲面を持つ構造物などにも設置が可能となります。室内の壁面や自動車のボディーの曲面など、これまで太陽電池を設置できなかった場所に導入できるため、太陽光発電の適用範囲が大幅に拡大します。
国産原料ヨウ素による経済安全保障上のメリット
ペロブスカイト太陽電池の主要原料であるヨウ素について、日本は世界第2位の生産量を誇っており、世界シェアの約3割を占めています。第1位はチリで約6割を占めていますが、推定埋蔵量では日本が圧倒的1位であり、世界の78%のシェアを持っています。
国内のヨウ素メーカーとしては、伊勢化学工業が世界シェア15%、合同資源(千葉県長生村)が7%、K&Oヨウ素(千葉県白子町)が5%を保有しています。このようにサプライチェーンを他国に頼らずに安定して確保できるため、経済安全保障の観点から見ても大きなメリットがあります。
2000年代、日本はシリコン系太陽電池の開発・実用化で世界をリードしながらも、中国企業に量産化で圧倒された苦い経験があります。シリコン系太陽電池の主要材料であるポリシリコンは中国が世界生産の大部分を占めていますが、ペロブスカイト太陽電池では国内で安定的に原材料を調達できる点が大きな強みとなっています。
弱い光でも発電できる特性
ペロブスカイト太陽電池は、曇り空や室内などの光が弱い環境でも発電できる特性を持っています。シリコン系太陽電池は直射日光のような強い光でないと効率的に発電できませんが、ペロブスカイト太陽電池は幅広い光の波長を吸収できるため、様々な環境で活用することができます。この特性は、日照条件が限られる都市部のビル壁面や室内照明での発電においても有利に働きます。
ペロブスカイト太陽電池の課題と解決への取り組み
ペロブスカイト太陽電池には多くのメリットがある一方で、実用化に向けて解決すべき課題も存在しています。耐久性と寿命の問題、鉛を含む材料の環境リスク、リサイクルの課題、そして大面積化の難しさが主な課題として挙げられます。
耐久性と寿命の問題
ペロブスカイト太陽電池の最大の課題は、耐久性と寿命です。現状では寿命が5年から10年程度と、従来のシリコン太陽電池の20年から30年と比べて短くなっています。長期運用ができるシリコン太陽電池と比較すると、設置費用が安くなったとしてもトータルの収益では不利になる可能性があります。
劣化の原因としては、光、湿気、熱のすべてがペロブスカイトの急速な劣化に寄与しています。ペロブスカイト太陽電池は酸素や湿度、紫外線などの外部環境に弱く、吸湿性を持つ材料が大気中の水分を吸収することで性能が低下します。また、紫外線にさらされると結晶構造が崩れてしまう問題もあります。
オックスフォードPVの屋外テストでは、最良の電池の運転開始後1年間の効率低下はわずか1%程度で、その後の低下率は鈍化していくとされています。しかし、高温多湿のサウジアラビアでのテストでは1年間の稼働後に変換効率が20%低下したという学術研究の結果もあり、設置環境によって大きな差が出ることがわかっています。
鉛を含む材料の環境リスクと対策
ペロブスカイト太陽電池の材料には鉛が使用されていることもデメリットの1つです。鉛は発電効率を高めるために重要な役割を果たしていますが、廃棄や製造時に適切に処理されないと、環境汚染や人体への悪影響が懸念されます。ペロブスカイト太陽電池には微量(0.5グラム/平方メートル程度)の鉛が含有されており、適切な処理・回収が必要となります。
この課題に対しては、鉛フリー材料の開発が進められています。スズ、ビスマス、アンチモンなどの鉛代替材料の研究が行われており、特にスズ系は有望視されています。筑波大学は2025年5月にスズ系ペロブスカイト太陽電池の高効率化メカニズムを解明するなど、基礎研究が着実に進展しています。
また、鉛を含むタイプの太陽電池でも、ガラスなどで完全に封止し、破損時にも鉛が溶出しないようにする技術開発が進められています。使用済み製品から鉛を安全に回収・再利用するリサイクルシステムの構築も進んでいます。
リサイクル技術の開発状況
ペロブスカイト太陽電池は、構造が複雑であるためリサイクルが難しいという課題があります。光吸収層、電子輸送層、正孔輸送層などの複数の層で構成されており、これらの層を分離して有害物質を回収し、再利用することが求められます。
ドイツのフラウンホーファーISEの研究者らは、劣化したペロブスカイト太陽電池素子をメチルアミンとエタノールの混合液に浸すことで、劣化したペロブスカイト結晶を液化し、多孔質層内から除去することに成功しています。再作製した素子が初期の素子性能の92%を維持することにも成功しており、リサイクル性の高さを示しています。
研究によると、ペロブスカイト太陽電池をリサイクルすることで、一次エネルギー消費量を72.6%削減、二酸化炭素排出量を71.2%削減できるとされており、適切なリサイクルにより持続可能性が高まります。経済産業省の「次世代型太陽電池戦略」では、軽量・減容化といった優れた特徴を活かし、より低コストなリサイクルシステムの構築を目指しています。
大面積化への技術的挑戦
ペロブスカイト太陽電池は、大面積化が難しいという課題も抱えています。小さなサイズでは高い変換効率を達成できても、実用サイズに拡大すると効率が低下する傾向があります。これは製造プロセスの均一性を保つことが難しいためです。ただし、この課題についても技術開発が進んでおり、パナソニックは実用サイズ(約800平方センチメートル以上)で18.1%の変換効率を達成しています。
変換効率の向上とタンデム型太陽電池の可能性
ペロブスカイト太陽電池の変換効率は発明当初から飛躍的に向上しており、より高効率を実現するタンデム型太陽電池の開発も進んでいます。
単層型の変換効率向上
ペロブスカイト太陽電池の変換効率は、2024年11月現在で単層のペロブスカイト太陽電池において26.7%まで向上しています。これはシリコン太陽電池の理論限界である29%に迫る数値であり、技術開発の急速な進展を示しています。
タンデム型太陽電池による高効率化
より高い変換効率を実現する技術として注目されているのが、タンデム型太陽電池です。タンデム型とは、ペロブスカイトとシリコンなど、異なる材料の太陽電池を積層したものです。ペロブスカイト層で波長の短い光を吸収し、シリコン層で波長の長い光を吸収することで、太陽光を無駄なく吸収し、30%以上の変換効率を実現することが可能になります。
ペロブスカイト太陽電池単独の理論変換効率は33.7%にとどまりますが、ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池を積層したタンデム型の理論変換効率は43.8%に達します。
国内外における開発成果
国内では、東芝がペロブスカイトとシリコンの2端子タンデム型太陽電池でエネルギー変換効率31.3%を実現しました。カネカではペロブスカイトと結晶シリコンのタンデム型で変換効率32.5%を記録しています。
エネコートテクノロジーズとトヨタ自動車との共同開発プロジェクトでは、フィルム型ペロブスカイト太陽電池と結晶シリコン太陽電池を組み合わせることで、4端子タンデム型として世界最高クラスの変換効率30.4%を達成しました。
2024年12月には、京都大学とオックスフォード大学との共同研究で、スズを含むペロブスカイト太陽電池のタンデム型で発電効率29.7%に到達したことが科学雑誌「ネイチャー」に発表されました。海外では、2024年10月時点でペロブスカイトとシリコンのタンデムセルで34.6%という世界記録が打ち立てられています。
日本政府による支援強化の全容
2025年は「事業化元年」と位置づけられ、日本政府はペロブスカイト太陽電池の普及に向けて多角的な支援策を展開しています。次世代型太陽電池戦略の策定、研究開発への大規模投資、FIT制度での優遇、そしてエネルギー基本計画への明記など、包括的な政策支援が進められています。
次世代型太陽電池戦略と普及目標
2024年11月25日、政府は次世代太陽電池「ペロブスカイト太陽電池」について、2025年度から国内市場を立ち上げ、2040年には原発20基分に相当する20ギガワットまで普及させる目標を正式に発表しました。経済産業省は「次世代型太陽電池戦略」において、2025年度までに20円/kWh、2030年度までに14円/kWhを実現する技術確立を目指しています。
2025年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、ペロブスカイト太陽電池について2040年度までに20GWの導入目標が正式に掲げられました。
研究開発への大規模投資
経済産業省は「次世代型太陽電池の開発プロジェクト」として、GI基金(グリーンイノベーション基金)から648億円を投じて技術開発を支援しています。これは当初の予算498億円から150億円が積み増しされた形であり、政府の強い意志が表れています。
2024年9月には、経済産業省がリコーやパナソニックホールディングス、京都大発スタートアップの技術開発や実証への246億円の補助を発表しました。量産規模は1ギガワット弱に及び、2030年をめどに量産を促す方針です。
FIT制度での優遇措置
経済産業省はペロブスカイト太陽電池を2025年のFIT(固定価格買取制度)において、通常の太陽光発電よりも優遇された買取価格(10円以上)にする見通しです。これにより、ペロブスカイト太陽電池の市場投入を後押しする狙いがあります。
第7次エネルギー基本計画での位置づけ
2025年2月18日に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、エネルギーの安定供給と脱炭素を両立させる観点から、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が示されました。この計画では、ペロブスカイト太陽電池の導入目標として2040年に20GWが明記されています。
高市内閣総理大臣の所信表明演説では、「原子力やペロブスカイト太陽電池を始めとする国産エネルギーは重要」と述べられました。次世代のペロブスカイト太陽電池が原子力と並ぶ「国産エネルギー」として公式に明記されたことは、政策上大きな意味を持っています。
第7次計画では、2040年度に電源構成の22%から29%を太陽光発電で構成する方針ですが、2023年度の実績は9.8%と、現状の2倍から3倍近くにする必要があります。この目標達成のためにも、ペロブスカイト太陽電池の普及が重要な役割を果たすと期待されています。
GXサプライチェーン構築支援事業
ペロブスカイト太陽電池を早期に社会実装することを目指し、政府ではGX経済移行債を活用して生産拠点整備のためのサプライチェーン構築を支援しています。令和6年度予算案には、ペロブスカイト太陽電池のサプライチェーン構築に向けて、令和6年度548億円、国庫債務負担行為を含め総額4212億円の「GXサプライチェーン構築支援事業」が計上されました。
この事業により、積水化学工業の1GW規模の製造拠点整備に対して最大1572.5億円の補助金が交付されるなど、大規模な支援が行われています。
国内メーカーの量産化動向
2025年を境に、国内メーカーによるペロブスカイト太陽電池の量産化が本格的に動き出しました。積水化学工業を筆頭に、パナソニック、キヤノン、エネコートテクノロジーズなど、複数の企業が事業化に向けた取り組みを加速させています。
積水化学工業の量産体制構築
ペロブスカイト太陽電池の量産化で最も進んでいるのが積水化学工業です。2024年12月26日、同社はフィルム型ペロブスカイト太陽電池の量産を開始すると発表しました。
積水化学は大阪府堺市のシャープ本社工場棟を250億円で購入し、既存の建物や電源設備、冷却設備などを活用しつつ、ペロブスカイト太陽電池の製造設備を新設しています。2024年度内に新工場の建設に着工し、2027年度内に年産100MW体制を構築する予定です。その後、2030年度には1GW(1000MW)規模への拡張を目指しています。
堺工場における建物などの取得や製造ラインへの投資の総額は3145億円を見込んでいます。この半分に当たる最大1572.5億円を経済産業省のGXサプライチェーン構築支援事業による補助で賄う計画です。
2025年1月6日には新会社「積水ソーラーフィルム株式会社」(資本金1億円)が設立されました。株主構成は積水化学86%、日本政策投資銀行14%となっています。
積水化学は樹脂フィルム基板を使った30cm幅の「ロール to ロール」という方法で製造したペロブスカイト太陽電池で、変換効率15%、10年相当の耐久性という仕様の製品を2025年に事業化できるところまで進めてきました。2025年度までに屋外耐久性を現状の10年から20年相当に伸ばしつつ、パネルの製造幅を現行の30cmから1mに拡大するという目標も設定しています。
パナソニックの実用化への取り組み
パナソニックは2026年からの試験販売を予定しており、実用化に向けた最終段階に入っています。同社は建材一体型やガラス型ペロブスカイト太陽電池の研究開発をリードし、ガラス建材一体型(ビル壁面・窓・外装材)の用途を重視しています。発電モジュールは実用サイズで18.1%の変換効率を達成しています。
また、封止技術の改良に取り組んでおり、屋外での長期使用を可能にする耐久性の高いペロブスカイト太陽電池の商業化を目指しています。
キヤノンの耐久性向上技術
2024年6月、キヤノンがペロブスカイト型太陽電池の耐用年数を従来の2倍の20年から30年に延ばせる新素材を開発したと発表されました。この新素材は2025年から量産される計画です。
その他の国内企業の動向
エネコートテクノロジーズは、曇り空や室内などの光が弱い環境での発電が得意なペロブスカイト太陽電池を開発しています。2024年4月からは北海道苫小牧の物流業者と提携して、倉庫の屋根や壁面にペロブスカイト太陽電池を設置する実証実験を開始しています。
倉元製作所は2024年8月にペロブスカイト型太陽電池の生産に乗り出すと発表しました。
設置事例と実証実験の広がり
ペロブスカイト太陽電池の社会実装に向けて、大阪・関西万博を始め、各地で設置事例と実証実験が広がっています。
大阪・関西万博での技術展示
2025年4月に開幕した大阪・関西万博は、ペロブスカイト太陽電池の技術のショーケースとなっています。
西ゲートバスターミナルには、国内最大のフィルム型ペロブスカイト太陽電池搭載施設が登場しました。積水化学工業が製造したフィルム型パネル(縦2m×横1m)を257枚、バス停の屋根約250mに設置しています。これほどの枚数で構成するペロブスカイト太陽電池を運用するのは国内初の試みであり、世界最大級の規模となっています。発電された電気は蓄電池に蓄えられ、バス停の夜間照明に使用されています。
パナソニックグループパビリオン「ノモの国」では、ガラス型ペロブスカイト太陽電池の描画の自由度の高さを生かしてアートを表現したプロトタイプが展示されています。アートをペロブスカイト太陽電池で表現した事例は世界初となります。
豊田合成、エネコートテクノロジーズ、セーレンが共同開発した「スマートウェア」も展示されています。フィルム型のペロブスカイト太陽電池がウエアの背中に貼り付けられ、太陽光で発電した電力で作業着に備え付けられたファンを回したり、スマホを充電したりすることができます。
HISは、サウレ・テクノロジーズ、フジプレアムと連携し、「電力館 可能性のタマゴたち」に設置するスマートポールに曲面ペロブスカイト太陽電池モジュールを実装しています。
各地での実証実験
横浜市では2025年1月20日より北部第二水再生センターでペロブスカイト太陽電池の実証実験を開始しました。ビル壁面への設置を想定し、窓ガラスの背面に配置された試験体で発電量の評価・検証を行っています。
神戸空港では制限区域内での発電、愛知県では堤防のり面への埋設など、従来の太陽光パネルでは難しかった場所での活用が進んでいます。
コスモエネルギーグループは、積水化学が製造するフィルム型ペロブスカイト太陽電池を、サービスステーション屋根や事業所のタンク壁面等へ設置する共同実証実験を開始しています。
世界市場と国際競争の現状
ペロブスカイト太陽電池市場は急速に拡大しており、日本企業は中国や欧州との国際競争に直面しています。
市場規模の拡大予測
富士経済の調査によると、ペロブスカイト太陽電池は2020年代後半から本格的な量産が始まり、2040年の世界市場は2023年比64.9倍の2兆4000億円と予測されています。2035年には世界の市場規模が1兆円に達するとの予測もあります。
中国企業の積極的な動向
中国では、国家戦略としてペロブスカイト太陽電池の量産化を急速に推進しています。2024年時点では建物据え付け型太陽電池向けを中心に商用化が進んでおり、中国企業を中心に量産設備の稼働も増えています。
中国は2015年頃からスタートアップ企業が複数設立され、多数の企業や大学において中国自国内の特許取得が進められています。中国企業によるペロブスカイト太陽電池の特許出願数は急増しています。
中国の昆山協鑫光電材料は、2025年3月竣工予定の1GW/年工場で、目標変換効率27%の大面積タンデム型ペロブスカイト太陽電池を生産する予定です。
欧州における商用化の進展
英国のOxford PVは、ペロブスカイトをシリコン基板上に積層した商用タンデムセルを2024年9月に世界初の商用出荷しました。最近のモジュール効率記録は26.9%と発表されています。
2025年4月には、Oxford PVと中国のTrina Solar(トリナ・ソーラー)がペロブスカイト太陽電池に関する独占的特許ライセンス契約を締結しました。
日本が直面する競争上の課題
2000年代、日本はシリコン系太陽電池の開発・実用化で先行しながらも、中国企業に量産化で圧倒された苦い経験があります。ペロブスカイト太陽電池においても、開発と実用化で先行しながら量産局面で中国に敗れた従来型太陽電池と同じ轍を踏むことへの懸念が示されています。
中国を始めとする海外企業では、2025年から2030年頃にかけてギガワット級の生産体制を構築する計画が増えており、日本企業より先行して量産化に向けた動きが進んでいる面もあります。日本としては、国産原料であるヨウ素の優位性を生かしつつ、政府支援を活用した早期の量産体制構築が急務となっています。
今後の展望と普及シナリオ
ペロブスカイト太陽電池は、技術開発の進展と政府支援を背景に、今後急速な普及が期待されています。
技術開発の方向性
今後の技術開発は、耐久性の向上、変換効率の更なる改善、大面積化技術の確立が中心となります。積水化学は2025年までに20年相当の耐久性を実現する方針を発表しており、これが実現すればシリコン太陽電池に匹敵する耐用年数が達成されます。
積水化学工業や東芝は、特殊な保護膜技術を開発し、湿気や酸素からペロブスカイト層を保護することで、太陽電池の耐久性を大幅に向上させることを目指しています。
タンデム型太陽電池の開発も加速しており、シリコンとの組み合わせによる高効率化が進んでいます。将来的には40%を超える変換効率の実現も視野に入っています。
段階的な普及シナリオ
政府目標では、2030年までの早期にGW級の量産体制を構築し、2040年までに20GWの発電規模まで普及させることを目指しています。
当面は、軽量かつフレキシブルであるというペロブスカイト太陽電池の特長を生かし、耐荷重性の低い屋根や、災害時避難所となる体育館などの公共施設を中心に導入が進む見込みです。その後、量産効果でコストを低減し、民間の工場・倉庫等の屋根・外壁面もターゲットに需要創出を行い、市場拡大を目指す方針です。
家庭用への展開の見通し
現時点では、ペロブスカイト太陽電池の家庭用実用化についてはまだ時間がかかると見られています。積水化学は「少量の商用化」から始め、街中への普及は「10年の期間」を要することも言及しています。
家庭用として普及するためには、耐久性の向上、コストの更なる低減、そして長期保証の体制構築が必要となります。ただし、技術開発のスピードは速く、2030年代には家庭用への展開も現実味を帯びてくる可能性があります。
まとめ
ペロブスカイト太陽電池は、2009年に日本で発明された革新的な次世代太陽電池技術として、エネルギー転換の切り札となる可能性を秘めています。軽量で柔軟性があり、従来のシリコン太陽電池では設置できなかった場所にも導入できる特性を持ち、主要原料のヨウ素は日本が世界第2位の生産量を持つことから、経済安全保障上も大きな優位性があります。
2025年は「事業化元年」として位置づけられ、積水化学工業を筆頭に国内メーカーの量産化が本格的に動き出しました。政府も648億円のGI基金による技術開発支援や、総額4212億円のGXサプライチェーン構築支援事業、FIT制度での優遇など、包括的な支援を強化しています。大阪・関西万博では技術のショーケースとして様々な形態のペロブスカイト太陽電池が展示され、社会実装の可能性を広く示しました。
一方で、耐久性や寿命の問題、中国との国際競争など課題も存在しています。過去にシリコン太陽電池で中国に量産化で敗れた経験を踏まえ、日本としては国産資源の優位性を生かしつつ、早期の量産体制構築と国際競争力の確保が急務となっています。
2040年に20GWという政府目標の達成に向けて、技術開発と産業育成の両面で取り組みが加速することが期待されます。ペロブスカイト太陽電池は、脱炭素社会の実現に向けた重要な国産エネルギー技術として、今後も大きな注目を集め続けていくでしょう。









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