生成AIが作った文章や画像が、既存の著作物とどこまで似ていれば著作権侵害と判断されるのか。判断の核心は「類似性」と「依拠性」という2つの要件にあり、両方が認められて初めて侵害が成立します。文化庁は、AIモデルを訓練する開発・学習段階と、生成物を公開したり販売したりする生成・利用段階を分けて考える枠組みを示していて、どちらの段階に当たるかで適用される著作権法の条文も変わってきます。ChatGPT、Stable Diffusion、Midjourney、Sora 2といったサービスが日常的に使われるようになった一方で、著作権をめぐる訴訟や摘発事例は2025年から2026年にかけて国内外で急増しました。文化庁の考え方と最新の訴訟事例をもとに、生成AIと著作権侵害の判断基準を確認していきます。

生成AIの著作権侵害は「類似性」と「依拠性」の2要件で判断される
日本の著作権法では、ある作品が既存の著作物の権利を侵害しているかどうかを、判例上「類似性」と「依拠性」という2つの要件で判断します。これは生成AIが作った作品でも変わらない基本原則で、AIが関与しているからといって特別な基準が用意されているわけではありません。
類似性とは、生成された作品と既存の著作物のあいだで、構図やテーマ、具体的な表現がどこまで一致しているかを示す概念です。著作権法が保護するのは「表現」であって「アイデア」ではないため、作風やジャンルが似ているだけでは類似性は認められません。ある画家の画風を真似ただけなら著作権侵害には当たりませんが、構図やキャラクターの表現そのものが酷似していれば、類似性が認められる可能性は高くなります。
依拠性とは、生成されたコンテンツが既存の著作物をもとに作られたかどうかを示す概念です。偶然似てしまっただけなら依拠性は認められず、侵害も成立しません。文化庁は、AI利用者が既存の著作物を認識していたかどうかを軸に、依拠性の判断を3つのパターンに分類しています。
依拠性は利用者の認識と学習データの中身で3パターンに分かれる
1つ目は、AI利用者が既存の著作物を認識していた場合です。特定のキャラクター名や作品名をプロンプトに直接入力して生成させたケースがこれに当たり、生成物が当該著作物と類似していれば著作権侵害が成立する可能性が高くなります。
2つ目は、利用者が著作物を認識していなくても、AIの学習データにその著作物が含まれていた場合です。AIが客観的に著作物へアクセスしていたと評価されるため、通常は依拠性が推認されます。ただし、学習段階で使った著作物の創作的表現が生成段階で出力されないよう技術的に抑えられている場合は、依拠性が否定される余地も残されているとされています。
3つ目は、利用者が著作物を認識しておらず、学習データにも含まれていなかった場合です。この場合は、たとえ結果として似た生成物ができたとしても依拠性は認められず、著作権侵害は成立しないと整理されています。
具体的にリスクが高まるのは、作品名やキャラクター名、作家名をプロンプトに直接入力し、その結果として似た画像や文章が生成されたケースです。逆に「かわいい猫のイラスト」のような抽象的な指示だけで生成した結果、たまたま既存作品と似てしまった場合は、依拠性が否定されやすくなります。もっとも、生成物と既存作品の類似度が極端に高いと、学習データに当該著作物が含まれていたことが推認され、依拠性が肯定される余地も残るため油断はできません。
なお、人間が創作的な関与をしないままAIが自律的に生成した作品には、原則として著作権が発生しません。人がAIを道具として使い、具体的な表現に関与したと認められる場合に限って、生成物に著作権が発生します。企業が生成AIで作った素材を独占的に使いたい場合は、この点への配慮が欠かせません。
文化庁は開発・学習段階と生成・利用段階を分けて著作権法を適用する
生成AIと著作権の関係を整理するうえでまず押さえておきたいのが、文化庁が公表した「AIと著作権に関する考え方について」という枠組みです。この資料は、AIをめぐる著作権法上の論点を「開発・学習段階」と「生成・利用段階」の2つに分けて説明しています。
開発・学習段階は、AIモデルを作るために大量のテキストや画像を学習データとして使う段階を指します。この段階には著作権法第30条の4が適用され、著作物の思想や感情を自分や他人に享受させる目的でない利用、いわゆる非享受目的の利用であれば、原則として著作権者の許諾なく著作物を使えるとされています。AIの学習はデータのパターンを解析する目的で行われると位置づけられているため、広く認められる利用行為です。
一方、生成・利用段階は、AIが作ったコンテンツを公開したり販売したり業務で使ったりする段階です。この段階では、AIが作ったものであっても、人間が作った作品と同じように既存の著作物の権利を侵害していないかが問われます。学習段階では比較的自由な利用が認められる一方、生成物を世に出す段階では通常の著作物利用と同じルールが適用されるという構造です。「AIが作ったのだから著作権は関係ない」と考えてしまうと、思わぬ形で侵害リスクを負うことになりかねません。
朝日新聞と日経新聞は米AI事業者に44億円の損害賠償を請求した
生成AIと著作権をめぐる紛争は、2025年から2026年にかけて、議論の段階から実際の訴訟や刑事摘発の段階へ移っています。
2025年8月26日、朝日新聞社と日本経済新聞社は、米国の生成AI事業者を相手取り、記事の無断利用を理由に共同で提訴しました。請求額は合計およそ44億円にのぼります。2026年5月14日には第1回口頭弁論が開かれ、被告側は日本の裁判所に国際裁判管轄が存在しないと主張しており、今後の展開次第では他の生成AI事業者への対応にも影響が及ぶ可能性があります。この提訴は、生成AIの学習データとして新聞記事のような報道コンテンツが無断で使われているのではないかという、メディア業界全体の懸念を映し出した事例といえます。
Sora 2のオプトアウト方式にコンテンツ産業団体が抗議した
2025年10月31日には、コンテンツ産業に関わる複数の団体が、OpenAIの映像生成AI「Sora 2」が採用するオプトアウト方式を批判する共同声明を発表しました。オプトアウト方式とは、権利者側が明示的に利用停止を申し出ない限り学習利用を認める仕組みで、団体側はこれが日本の著作権法の原則に反すると主張しています。声明では、権利者の事前許諾を前提とする「オプトイン原則」の徹底と、学習データの透明性確保を求めました。生成AI事業者のデータ収集方針そのものが、業界横断の問題として取り上げられるようになった動きです。
AI生成画像の無断複製で全国初の書類送検事例が発生した
刑事事件としては、2025年11月20日に千葉県警が、AI生成画像を無断で複製し書籍の表紙に使った男性を著作権法違反の疑いで書類送検しました。AI生成画像の著作権侵害をめぐる摘発としては、全国で初めての事例とされています。生成AIによる作品であっても、それを無断で複製・利用する行為は刑事罰の対象になり得ることを示した事例で、「AIが生成したものだから自由に使える」という認識が誤りであることを浮かび上がらせました。他者が作った生成物である以上、無断利用は著作権侵害になり得るという点は覚えておく必要があります。
英国高等裁判所はGetty対Stability AI訴訟で著作権の主要請求を退けた
海外では、生成AIと著作権をめぐる訴訟が日本より早い段階から本格化しており、国内の実務にも影響を与えています。
代表例が、英国の「Getty Images対Stability AI」訴訟です。2025年11月4日、英国の高等裁判所は、AIの開発・利用に関する著作権および商標権侵害の実体的な争点を扱った英国初の判決を下しました。Getty Imagesは当初、Stability AIの画像生成モデル「Stable Diffusion」の学習と一部の生成物が、Getty保有の著作権やデータベース権を侵害していると主張していました。しかしStable Diffusionの学習が英国外で行われていたため、侵害行為が英国内で発生したことを立証できず、著作権に関する主要な請求は裁判の終盤までに取り下げられています。一方で商標権侵害については一部Getty側の主張が認められ、Stable Diffusionが過去にGettyの透かしを含む合成画像を生成していたことが、限定的な範囲で商標権侵害に当たると判断されました。もっともこの判決は、著作権で保護された画像を学習目的でスクレイピングすること自体が英国著作権法上適法かどうかという核心的な論点には踏み込んでおらず、議論は今後も続く見通しです。
ニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟は証拠開示をめぐる争いが続く
米国では、ニューヨーク・タイムズ社らがOpenAIとマイクロソフトを相手取り2023年12月に提起した著作権訴訟が、2026年に入っても続いています。この訴訟は、著作権で保護されたジャーナリズム作品をAIモデルの学習に使うことが米国著作権法上の「フェアユース」に当たるかどうかを中心的な争点としており、報道業界の将来にも影響するとみられています。
2026年7月には、ニューヨーク・タイムズを含む新聞社グループが、OpenAIが自社システムを検索して数百万件の記事を学習に不正利用した証拠の有無を調べる能力について、裁判所に虚偽の説明をしたとして制裁を求める申し立てを行ったと報じられました。4月に行われた証言録取では、OpenAIのデータプライバシーエンジニアが、学習データの中から著作権のある報道作品を検索・評価する内部調査をすでに実施していたと証言しています。同社は約7800万件の匿名化されたChatGPT会話のデータベースを、自社がどの程度他者の著作物を侵害しているか把握するために使っていたとも述べたとされています。この訴訟はまだ判決に至っていないものの、生成AI事業者が学習データの内容や侵害リスクをどこまで把握・管理すべきかという実務上の論点を提起しています。
主要な訴訟・摘発事例は国内外で5件に上る
これまで見てきた事例を時系列で整理すると、次の表のようになります。
| 時期 | 当事者 | 内容・結果 |
|---|---|---|
| 2025年8月26日 | 朝日新聞・日経新聞対米生成AI事業者(日本) | 記事の無断利用で共同提訴、請求額は約44億円 |
| 2025年11月4日 | Getty Images対Stability AI(英国) | 著作権の主要請求は取り下げ、商標権侵害は一部認定 |
| 2025年11月20日 | 千葉県警による書類送検(日本) | AI生成画像の無断複製、全国初の摘発事例 |
| 2023年12月〜 | ニューヨーク・タイムズら対OpenAI・マイクロソフト(米国) | フェアユース該当性が争点、2026年も係争中 |
| 2025年6月 | ディズニー・ユニバーサル対Midjourney(米国) | 直接侵害・間接侵害の両面から提訴 |
文化庁のチェックリストは開発者や提供事業者、利用者ごとに対策を示す
前述の「AIと著作権に関する考え方について」は、2024年3月15日に文化審議会著作権分科会法制度小委員会がまとめたものです。文化庁はこれをふまえ、より実務的な内容として2024年7月31日に「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」を公開しました。このガイダンスは、生成AIと著作権の関係で生じるリスクを減らし、権利者が自分の権利を守るために望ましい取り組みを、AI開発者、AI提供事業者、AI利用者という立場ごとにまとめている点が特徴です。AI利用者には事業者やクリエイター、一般利用者も含まれます。
AI開発者に対しては、著作権法第30条の4などの要件を満たしていることを事後的に立証できるよう、学習データの出所や学習過程に関する意思決定の記録を残し、文書化しておくことが望ましいとされています。学習データを集める際には、海賊版や不正アップロードされたデータを使わないことが基本で、できる限り正規の手段でデータを集めることも求められています。AI利用者に対しては、生成物を公開する前に既存の著作物との類似性を確認するなど、チェック体制の重要性が改めて示されました。このガイダンスに法的拘束力はありませんが、実務上の指針として多くの企業が参照する資料になっています。
AI提供事業者も侵害を助長すれば著作権侵害の主体となり得る
ここまで述べてきた類似性・依拠性の判断は、主にAIを操作して生成物を作らせた「利用者」の責任に関する枠組みです。しかし近年は、AIサービスそのものを開発・提供する事業者の責任も重要な論点として議論されています。国内の議論では、特定の著作権者の作品に類似した生成物が高頻度で生成されるようなAIを提供している場合や、そうした侵害を助長する形で画像生成AIサービスを提供している場合に、AI開発者側が著作権侵害の「規範的な行為主体」に当たるとされるケースが挙げられています。単にツールを提供しているだけでなく、侵害的な生成を誘発・助長する仕組みそのものを設計・運営していたと評価されれば、サービス提供者自身が侵害の主体として責任を問われる可能性があるという考え方です。
海外でも、AI提供事業者を直接の被告とする訴訟が相次いでいます。2025年6月には、ディズニーとユニバーサルが画像・動画生成AIサービス「Midjourney」を著作権侵害で提訴し、AIの学習段階における無断利用を直接侵害と間接侵害の両面から争う姿勢を見せました。ハリウッドの大手スタジオが生成AI事業者を相手取った象徴的な事例です。中国でも、複数の生成AIサービス事業者を被告とする訴訟で、裁判所が著作権侵害の該当性を認め、損害賠償の支払いと侵害コンテンツの生成・配信停止を命じる判決が出ています。AIモデルを開発・提供する事業者自身が負う法的リスクは、利用者のリスクとは別の軸で急速に高まっています。
引用と私的使用は要件を満たさなければ権利制限の対象にならない
著作権侵害が問題になる場面でも、著作権法上の権利制限規定に当たれば著作権者の許諾なく著作物を使えます。生成AIとの関係で特に重要なのが、前述した「著作物に表現された思想又は感情の享受を目的としない利用」を定めた著作権法第30条の4です。この規定は、主にAIの開発・学習段階の利用を正当化する根拠として働きます。
これに加えて、「私的使用のための複製」を定めた著作権法第30条や、「引用」を定めた著作権法第32条も、生成AIに関連する場面でしばしば問題になります。私的使用とは、個人が自分自身や家庭内など限られた範囲で著作物を使うために複製する行為を指し、この範囲内であれば著作権者の許諾は不要です。ただし、生成AIで作ったコンテンツをSNSやブログで公開したり商用利用したりする場合は私的使用の範囲を超えるため、この規定は適用されません。
引用は、公表された著作物を報道や批評、研究などの目的で正当な範囲内で使う場合に認められます。引用として認められるには、引用部分とそれ以外を明確に区別すること、自分の著作物が主で引用部分が従という主従関係が保たれていること、引用の必要性があることといった要件を満たす必要があります。生成AIが既存の著作物の一部をそのまま出力した場合、この要件を満たしていなければ著作権侵害と判断されるリスクが高くなります。
著作者人格権は財産権とは別に氏名表示権や同一性保持権が問題になる
ここまで見てきた類似性・依拠性の議論は、主に著作権(財産権)の侵害に関するものです。生成AIとの関係ではもう一つ、著作者人格権の侵害という論点も見落とせません。著作者人格権は、著作物を公表するかどうかを著作者自身が決められる「公表権」、著作者名の表示方法を決められる「氏名表示権」、著作者の意に反して著作物の内容や題号を改変されない「同一性保持権」の3つで構成されています。
生成AIとの関係では、特に氏名表示権と同一性保持権が問題になりやすいといえます。AI生成物が既存の著作物の複製物や二次的著作物と評価される場合、本来表示されるべき著作者名やクリエイター名、作品に付されていたウォーターマークなどが除去された状態で提供・提示されると、氏名表示権の侵害に当たります。既存の著作物をAIで改変した結果、著作者の意図しない形で内容が変わった場合には、同一性保持権の侵害が問題になります。既存の音声を学習・合成する音声生成AIについても、複製権侵害にとどまらず、同一性保持権や翻案権の侵害に当たるリスクがあります。
重要なのは、学習段階の非享受目的利用を認める著作権法第30条の4のような権利制限規定が、あくまで著作権(財産権)を制限するものであり、著作者人格権までは制限しないという点です。学習段階での利用が著作権法上適法だったとしても、生成・利用段階で著作者人格権を侵害する形でコンテンツが公開・改変されれば、別途、著作者人格権の侵害として責任を問われる可能性があります。財産権としての著作権侵害だけに注目しがちな実務担当者が見落としやすいポイントで、生成AIを使う際には併せて意識しておく必要があります。
企業はプロンプトの禁止事項を定め公開前のチェック体制を作るべき
生成AIを業務やビジネスで使う企業や個人にとって、著作権侵害のリスクをゼロにするのは難しいとしても、リスクを最小限に抑える対策は可能です。
まず社内ガイドラインの策定です。どのような生成AIツールを、どのような目的で、どこまで使ってよいのかを明確にし、特定の作家名やキャラクター名、作品名をプロンプトに直接入力するような使い方を禁止するなど、具体的なルールを定めておくことが重要です。既存の著作物を認識したうえでプロンプトに入力する行為は、前述した依拠性の判断で不利に働く可能性が高いため、この点を従業員に周知しておくことが有効な予防策になります。
次に、生成物を公開・販売する前のチェック体制です。AIが出力したコンテンツが既存の有名な作品やキャラクターと似ていないかを確認するチェックリストを整え、公開前に第三者の目でも確認する流れを作ることで、意図しない著作権侵害を防ぎやすくなります。
さらに、法改正や最新判例など生成AIと著作権をめぐる情報を継続的に集め、社内で共有する体制も欠かせません。この分野は2025年から2026年にかけて急速に動いており、文化庁の考え方や国内外の判例は今後も更新されていく可能性が高いためです。最新の動向を把握していないと、古い基準のまま判断してしまうリスクがあります。
そのほか、学習データの出所や権利関係が明示されている生成AIツールを選ぶことや、自社で持つ画像・テキストなど権利関係がクリアなデータをもとに独自のAIモデルやデータセットを作ることも、中長期的なリスク低減策として有効とされています。商用利用を前提とする企業にとっては、AIベンダーが著作権侵害に関する補償を提供しているかどうかも、ツール選定の判断材料になりつつあります。
クリエイター団体は学習前の許諾義務化と補償制度の整備を求める
生成AIの著作権問題をめぐっては、権利者側・クリエイター側の動きも2025年後半から2026年にかけて活発になっています。スタジオジブリや任天堂など100社以上が加盟するコンテンツ海外流通促進機構(CODA)は、2025年10月28日にOpenAIへ書面で要請を行いました。日本のアニメーション制作者協会や出版社19団体も、Sora 2による日本のコンテンツの無断学習に抗議する共同声明を出しています。イラストレーターやクリエイターら約30名は「クリエイターとAIの未来を考える会」という団体を結成し、記者会見を開いて著作権保護を訴え、政府に対してAI学習前の権利者の許諾を義務化することや補償制度の整備を求めました。
日本のフリーランス団体は2026年1月20日、生成AIとクリエイターの未来に関する大規模調査の結果を発表しています。回答数は24,991件にのぼりました。CODAも2026年5月27日に、生成AIサービスによる著作権侵害と権利保護に関する声明を公表しています。2026年5月時点では、日本国内で生成AI事業者を被告とする著作権侵害訴訟は、前述の朝日新聞・日経新聞による提訴を除くとまだ提起されていないとされ、法律専門家のあいだでは、こうした動きが今後の訴訟につながっていく可能性が高いとみられています。クリエイター側の声が政策形成にどこまで反映されるかは、今後の著作権法改正の議論でも焦点になりそうです。
侵害が認められれば差止請求と損害賠償請求の両方が可能になる
類似性・依拠性の両方が認められ、生成AIによるコンテンツが著作権侵害に当たると判断された場合、著作権者は複数の法的措置を取れます。まず著作権法第112条にもとづき、侵害行為をしている者や侵害するおそれがある者に対して、侵害の停止または予防を求める差止請求が可能です。具体的には、侵害コンテンツの公開停止や削除、侵害コンテンツを使った商品の販売停止などを求められます。同条第2項では、差止請求とあわせて、侵害行為を組成した物や侵害行為で作られた物、侵害行為に使われた機械・器具などの廃棄処分、その他侵害の停止・予防に必要な措置を求めることも認められています。
金銭的な救済としては損害賠償請求があります。著作権法第114条には損害額の推定規定があり、侵害者が侵害行為によって利益を得ている場合、その利益額が権利者の損害額として推定される仕組みが用意されています。これにより、権利者は損害額の立証負担を軽くした形で賠償を請求できます。このほか、侵害によって著作者の名誉や声望が害された場合には、謝罪広告の掲載などを求める名誉回復等の措置請求も可能です。
故意に著作権を侵害したと認められる悪質なケースでは、民事上の責任にとどまらず刑事罰の対象にもなり得ます。前述した千葉県警による書類送検の事例のように、AI生成物であっても他者が作ったものを無断で複製・利用する行為は刑事事件として立件される可能性がある以上、生成AIを使う側は生成物の取り扱いについて民事・刑事の両面でリスクを認識しておく必要があります。
学習段階と利用段階を分けて考えることが判断基準を理解する近道
生成AIと著作権侵害の判断基準は、開発・学習段階と生成・利用段階という2つの局面に分けて考える必要があります。学習段階では著作権法第30条の4により非享受目的の利用が原則として広く認められる一方、生成物を実際に公開・利用する段階では、通常の著作物と同じように類似性と依拠性という2つの要件で侵害の成否が判断されます。依拠性の判断では、AI利用者が既存の著作物を認識していたかどうか、そして学習データに当該著作物が含まれていたかどうかが重要な分かれ目になります。
2025年から2026年にかけて、日本国内では朝日新聞・日経新聞による提訴や、AI生成画像の無断利用をめぐる全国初の刑事摘発事例が起き、海外でもGetty Images対Stability AI訴訟の判決や、ニューヨーク・タイムズ対OpenAI訴訟における証拠開示をめぐる争いなど、実際の紛争が本格化しています。生成AIを使う企業や個人は、こうした最新の動向をふまえ、社内ガイドラインの整備やチェック体制の構築といった具体的な対策を進めていく段階に入ったといえます。








