コーヒーミルの静電気を水滴で除去するワンプッシュのやり方と水の量

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コーヒーミルの静電気を水滴で除去するため、カップの豆に霧吹きで水をひと吹きする様子

コーヒーミルの静電気を除去する手軽な方法は、挽く直前の豆に霧吹きで水をひと吹きすることです。このやり方はRDT(Ross Droplet Technique、ロス・ドロップレット・テクニック)という名前で知られ、粉の飛び散りや付着を減らせます。加える水の目安は豆1gあたり20マイクロリットルで、20gの豆ならおよそ1滴に相当するとされています。

押さえる点は、水を入れすぎないことと、挽く直前に吹くことの2点です。水を足すとエスプレッソの抽出結果まで変わることを、複数の研究が報告しています。刃のさびやメーカー保証についても、水を吹く前に知っておきたい事実があります。

コーヒーミルの静電気を除去するワンプッシュのやり方として、挽く直前の豆に霧吹きで水を吹く手元
目次

水滴で静電気が減るのは、水が電荷を逃がすから

水は電気を通します。そのため、挽いている最中にたまる電荷を素早く逃がせると説明されています。RDTはこの性質を利用した手法で、名前の「ドロップレット」は小さな水滴を意味します。

豆の水分と電気の関係については、オレゴン大学のクリストファー・ヘンドン准教授らのチームが2023年12月、材料科学誌「Matter」に論文「Moisture-controlled triboelectrification during coffee grinding」を発表しました。豆に含まれる水分が多いほど、また挽き目を粗くするほど、発生する電気は少ないという結果です。

では、豆はなぜ電気を帯びるのでしょうか。原因は摩擦帯電です。摩擦帯電とは、種類の違う2つの物質をこすり合わせたときに、それぞれが逆の極性の電気を持つ現象を指します。髪をプラスチックの下敷きでこすったときに起きる、あの身近な帯電と同じ仕組みで、ミルの中では豆が刃やシュートにこすれるたびに起きています。普段の暮らしで出会う静電気も、大半はこの摩擦帯電によるものです。条件次第では同じ物質どうしでも発生するそうです。

RDTを考案したのはデイビッド・ロス氏

RDTの考案者はデイビッド・ロス氏で、時期は2005年と見られています。ヘンドン准教授は、最初の提案者について、家庭用バリスタのフォーラムにいた愛好家だったと話しています。

静電気が強く出る条件はプラスチック容器と乾燥した部屋

静電気の悩みを悪化させやすいのは、粉を受けるプラスチック製の容器です。プラスチックは電気の逃げ道になりにくく、たまった電荷がなかなか抜けません。ある研究によれば、プラスチック製のホッパーやシュートとコーヒーが接触した瞬間から、電荷はたまり始めるそうです。

湿度の低い乾いた環境では静電気がたまりやすい、という指摘があります。さらに、ミルが同じでも豆を替えただけで静電気の出方は変わるとされています。影響する要素は煎り度や鮮度、湿度、温度と幅広く、豆が古いほど静電気が起きやすいという説明も見られます。

水滴のワンプッシュのやり方は量る、吹く、混ぜる、挽くの4工程

コーヒーミルの静電気を除去する4工程の図。量る、吹く、混ぜる、挽くの順に進める

手順は4つだけです。まず1回分の豆を量り、容器かカップへ移します。次に霧吹き(スプレーボトル)を向けて、ごく少量の水をひと吹きします。吹いたらスプーンの柄や箸で軽くかき回し、水分を豆全体に行き渡らせてください。最後に、水気が乾ききらないうちに豆をミルへ投入して挽きます。水を足すのは毎回、挽く直前です。

霧吹きがなければスプーンの柄で水を移す

霧吹きが手元にない日でも、RDTはできます。スプーンの柄を水で濡らし、その先を豆にちょんと当てれば十分です。スプーン本体、フォーク、箸でも代わりになります。

水の量の目安は豆1gあたり20マイクロリットル

コーヒーミルの静電気対策で豆1gあたりに加える水の量を、5、20〜30、50マイクロリットルの報告結果で比べた図

基準として覚えておきたい数字は、研究に登場する豆1gあたり20マイクロリットルです。1杯分の20gの豆なら、およそ1滴に相当するとされています。この前後の量を試した報告もあり、結果は次のとおりです。

豆1gあたりの水の量報告された結果
5マイクロリットル程度粉が静電気で固まる現象がすぐに減った
20〜30マイクロリットル電荷が少なくとも50〜60%減った(多くの場合、帯電はゼロにならず残った)
50マイクロリットル(0.05mL)未満ダマと、微粉(狙った挽き目よりはるかに細かい粉)のミル内への付着を防げた(iScience掲載の論文)

霧吹きのワンプッシュの水量は機種で違う

1プッシュで何マイクロリットル出るかは製品ごとに異なり、決まった換算はありません。だから最初は控えめに吹いて、粉の散り具合を見ながら加減するのが安全です。なお、エスプレッソに限っては、1回より4回ほど吹いたほうが抽出が良くなるという意見もあります。

水を入れすぎるとダマが増えて逆効果になる

水は多ければよいというものではなく、ある量を超えると逆効果です。豆の表面に残った水分がミルの中で粉を固まらせ、ダマができやすくなります。ミルの内部を傷めるおそれもあるので、吹くのは霧状の少量までにしてください。

水を足すとエスプレッソの固形分濃度は8.2%から8.9%に増えた

挽く前に少量の水を足した豆では、エスプレッソ1杯に溶けたコーヒー固形分が、濃度にして8.2%から8.9%へ上がったと報告されています。静電気を抑えると抽出の偏りが減るため、と説明されています。

8.2%や8.9%はTDSという濃さの指標

先ほどの数値は、TDS(総溶解固形分)にあたります。TDSとは、抽出液に溶けたコーヒー成分の割合のことで、液の濃さを質量ベースで表した値です。測定には屈折計がよく使われます。フィルターコーヒーなら約1.2〜1.5%、エスプレッソなら約8〜12%が一般的な目安です。

あくまで濃度の指標なので、数字が高ければおいしいとは言えません。TDSが高くなるほど、苦味やスモーキーさは強まる傾向にあります。

静電気のダマはチャネリングを招く

2020年の研究で、細挽きのコーヒーは目に見えないほど小さな塊を作るとわかりました。抽出の偏りは、この塊から生じるとされています。

チャネリングとは、粉の層にできた弱い部分へお湯が集まり、素通りしてしまう現象です。エスプレッソの代表的な不具合で、抽出ムラの大きな原因にもなっています。静電気で粉がダマになると、このチャネリングにつながります。塊があると密な部分と粗い部分ができ、お湯の流れがそこで偏ります。粉の配り方にムラがある場合も同じです。しかも一度できた通り道は、抽出の途中でさらに広がります。

水とイオナイザーの比較で抽出に差が出たのは水だけ

静電気を抑える手段はいくつかあり、それらを比べたのが2024年9月にiScienceへ掲載された論文「Strategies to mitigate electrostatic charging during coffee grinding」です。比べた方法のうち、豆に水を足す方法と高電圧のイオナイザーで除電する方法は、どちらも見た目の飛び散りを減らしました。ところがエスプレッソの抽出結果まで変えたのは、水を足した場合だけです。

イオナイザーとは、空気をイオン化して、帯電した物の電荷を中和する除電装置です。

水を使う前にミルの刃の素材と保証を確認する

コーヒーミルに水を吹く前に確認する、ステンレスの刃、焼入れ鋼の刃、メーカー保証の3点をまとめた図

RDTを始める前に調べておきたいのは、自分のミルの刃が何でできているかです。現代のミルの多くはステンレス製の刃を使っていて、こちらはさびにくい素材です。一方で焼入れ鋼の刃については、水分でさびる可能性があると注意を促す販売店もあります。素材がわからなければ、メーカーに問い合わせるのが無難です。長期間のテストで刃の損傷もさびも出なかったと説明する販売店がある一方、ミルメーカーが勧めている方法ではないため自己責任だとする見方があります。

ステンレス鋼がさびにくいのは、表面に不動態皮膜があるからです。不動態皮膜とは、クロムが大気中の酸素などと結びついて生じる酸化皮膜のことで、腐食の進行を食い止める力があります。炭素鋼にはこの保護膜がないので、鉄が水や酸素と反応してさびます。

保証に響くおそれを挙げる販売店も見られます。保証を重視する場合は、水を吹く前に取扱説明書かメーカーの情報を読んでください。

RDTの効果を感じやすいのは1回ずつ挽くシングルドーズ

RDTの効果を感じやすいのは、毎回豆を量って挽く使い方です。ホッパーに大量の豆を入れておく使い方だと、利点はあまりはっきりしません。

シングルドーズとは、1回分の豆だけを入れてその都度挽く使い方、またはそのための機種を指します。一般的なミルは大きなホッパーに多めの豆を入れておける作りですが、シングルドーズは豆を1回分ずつ投入します。そのため、酸化のリスクを大幅に下げられる点と、香りの成分が保たれて味が良くなる点が利点に挙げられています。計量しやすく無駄が減ることも利点です。最近はホッパーを小さくし、挽き終えた後に残る粉を減らす仕組みを載せた、プロ向けやプロシューマー向けの機種が増えてきました。ただしシングルドーズは、素早い提供が求められるカフェのように、バリスタに十分な時間がない現場には向かないとされています。

ホッパーとは、ミルで挽く前の豆をためておく容器のことです。大量の豆をためておけるホッパーグラインダーは、ボタン一つで一定の品質の粉が得やすく、結果が安定するのが強みです。

EK43の計測ではRDTで残留量が0.3gから0.1gに減った

ミル内に残る豆の量がRDTで減ったという計測結果も出ています。EK43というミルを使った計測で、RDTなしで0.3g、ありで0.1gが残りました。

水を使わない対策は金属容器への交換と排出口の掃除

粉を受ける容器をプラスチックから金属製に替えると、静電気はたまりにくくなるという説明があります。排出口にたまった粉をこまめに掃除するのも対策になります。掃除の道具としては、粉の飛び散りや付着を抑えながら使えるとうたう帯電防止ブラシが、日本のメーカーから発売されています。

帯電防止機能のついたミルに買い替える手もあります。ラッセルホブスの「スマートコーングラインダー 8500JP」は、2026年9月18日に発売された機種で、希望価格は16,500円(税込)です。粉の通り道に帯電防止イオンを出す静電除去装置を積み、挽くときの静電気を抑えて飛び散りを減らす仕様になっています。

挽き目はホッパーを回すだけで、極細挽きから粗挽きまで34段階に切り替わります。電源と挽き時間の設定は前面のタッチパネルで行い、時間は1秒刻みで表示され、設定時間になると自動で止まります。入る量は中煎りの豆でホッパー約280g、中挽きの粉でコンテナ約100gまでです。

最初の一吹きは少なめから始める

コーヒーミルの静電気を除去したいなら、手軽なのはRDTです。挽く直前の豆に、霧吹きでごく少量の水を吹きます。水は豆1gに20マイクロリットルが目安で、20gならおよそ1滴に相当するとされています。霧吹きのワンプッシュは機種で量が違うので、少なめに吹いて様子を見ながら調整します。水が多いとダマができ、ミルを傷めるおそれも出てきます。ミルの刃の素材も確認しましょう。

乾いた部屋でコーヒーミルの静電気が強まる背景は、冬に静電気が起きやすい原因と対策を解説した記事で確かめられます。

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