上司に仕事の疑問点を質問するときは、聞きたいことを自分の案つきの確認にまとめ、結論から短く伝えるのがいちばんのコツです。
分からないことが出てきても、忙しそうな上司には声をかけにくいものです。うまく話をまとめられず、説明がだらだら長くなってしまう人もいます。

上司への質問は自分の案を添えて正否を確かめる形にする

判断に迷ったら、まず自分がどうするつもりかを示し、その判断で問題ないかを確かめます。「私はこう進めるつもりですが、この判断で問題ないでしょうか」と聞かれた上司は、案の当否を返せば済むので、答える手間がぐっと減ります。
避けたいのは「どうしましょう」と聞いて、判断を丸ごと上司に預ける聞き方です。「どうしたらいいでしょうか」の一言だけで任せてしまうと、ほしかった助言も得にくくなります。持っていくのは、問題がいまどうなっているのか、それが仕事にどう響くのかという具体的な情報と、自分なりの仮説です。
仮説思考とは、情報が限られた段階で仮の答えを先に立て、検証しながら直していく考え方のことです。 仮説の書き方は、「〇〇なら、△△になると予測できる」という形です。先に仮の答えを置くと、考えることも調べることも大きく絞り込めるので、問題解決が効率よく進みます。
進め方としては、仮説を立て、情報を集めて検証し、仮説を磨き上げます。情報を集めてから仮説を立てる流れより、先に仮説を立て、それから情報を集め、仮説を組み立て直して実行し、最後に検証する流れのほうが勧められています。似た言葉にクリティカルシンキング(批判的思考)がありますが、こちらは仮説が正しいかを確かめるのが目的です。仮説思考は、答えの仮説を立てることそのものを目的にしています。上司に質問するとき、自分の考えを一言添えて持っていくのは、この考え方を日々の仕事で使う場面にあたります。
自分の考えを用意しておく理由は、もう一つあります。部下に「どう思う」と問い返す上司もいるからです。問い返しを嫌がり、早く答えがほしいと感じる部下もいます。ただ、答えを教える前に部下へ質問し、自力で答えにたどり着かせるのが上司の役目だという見方もあります。そのため、問い返されても答えられるように、自分なりの考えを用意してから質問に行くと、慌てずに対応できます。
質問できなかった理由の最多は上司が忙しそうで話しかけづらいこと(28.0%)

質問を止める主な壁は、遠慮や気後れにあると読み取れます。入社したばかりのころの質問や相談について聞いた調査では、できなかった理由として最も多かったのが、上司や先輩が忙しそうで声をかけにくかったというもので、28.0%でした。2番目は、上司や先輩の人柄が分からず話しにくかったという理由で、24.4%です。
質問した中身は、仕事に関わるものが中心です。作業を具体的にどう進めるかが57.3%、業務の内容そのものが50.9%でした。質問したタイミングで多かったのは、会議のとき以外の業務時間で、46.2%です。業務の途中で声をかける場面が多かったことになります。
聞かれる側の態度も、質問のしやすさを左右します。質問に来た新入社員に顔を上げない、表情を曇らせる、といった上司の反応は、質問する意欲を下げてしまいます。逆の例もあります。新人の退職理由で一番多いのが、先輩が教えてくれないことだったある企業では、ふたを開けると、多くの新人がそもそも先輩に質問をしていませんでした。質問しやすい環境は、聞く側と聞かれる側の両方でつくるものといえます。
心理的安全性が低い職場では無知と思われる不安から質問しにくくなる
心理的安全性とは、人間関係のうえでリスクのある発言をしても大丈夫だと、チームのメンバーが信じられている状態のことです。 思いついたアイデアや分からないこと、気がかりな点、自分のミスを話しても、罰を受けたり恥をかかされたりする心配がない、という中身で説明されます。1999年にこの概念を唱えたのは、エイミー・C・エドモンドソン教授です。所属はハーバード・ビジネス・スクールで、組織行動学を専門にしています。
この安全性が低い職場にいると、周りから無知、無能、邪魔者、ネガティブだと見られるのではないかという不安を抱えやすくなります。ただし、心理的安全性は仲が良いことや衝突がないことを意味しません。率直な意見交換が活発なチームほど心理的安全性が高い傾向にある、という解説もあります。この概念は、Googleのプロジェクト・アリストテレスという研究をきっかけに広く知られるようになりました。
上司が理想の部下に最も求めるのは報連相ができること(17.8%)
マイナビニュースが会員300人に「理想の部下に最も近い特徴」を尋ねた調査では、最も多くの回答を集めたのは報連相がきちんとできることで、割合は17.8%です。主体的に動けることや、指示をすぐに理解できることが、それに続きました。指示が出る前に自分から先回りして動ける部下が、高い評価を得ていました。
質問の前に目的を一文で決め、5W1Hで足りない情報を洗い出す
聞く前の準備は、質問の目的を一文で言えるようにするところから始めます。次に、5W1Hのどの情報が欠けているのかを確かめ、最後に具体的で答えやすい言い方へ直します。実務ではこの順番で整理するのが進めやすい方法です。仕事で的確に問いかけるには、状況と目的と制約を押さえておく必要があります。
5W1Hの中でも「なぜ」は、理由や動機を探る問いです。何のための作業なのか、目的を確かめたい質問なら、「なぜ」を真ん中に据えると話がまとまりやすくなります。
相手の返しにも備えておきます。上司から返ってきそうな切り返しを想定し、それへの答えを用意しておくことも勧められています。相談であれば、判断に必要な材料と、上司の側にある制約もあらかじめ自分で整理しておきます。準備があれば、相談の場で話が進みやすくなります。
5W1Hは基本情報、5W2Hは費用が絡む話で使う
5W1Hは、集めた情報を整えて人に伝えるときに使う枠組みです。 基本の情報はまず5W1Hで押さえ、費用が関わる話になったら5W2Hに切り替えると使い分けで迷いません。それぞれの型に含まれる要素と、向いている場面は次のとおりです。
| 型 | 含まれる要素 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 5W1H | When(いつ)、Where(どこで)、Who(誰が)、What(何を)、Why(なぜ)、How(どのように) | 基本の情報を押さえるとき |
| 5W2H | 5W1H+How much(いくらで) | 予算や費用、価格の検討。見積書や稟議 |
| 5W3H | 5W2H+How many(どのくらい) | 数量や規模、頻度の確認 |
表に出てくる稟議(りんぎ)とは、担当者が自分の権限だけでは決められない支出、契約、採用などを、書類を関係者に回して承認してもらう社内の手続きのことです。
疑問点はメモの余白にためて、番号を付けてまとめて聞く
同じことを何度も聞かずに済むかどうかは、メモの取り方で決まります。おすすめの方法は、ノートの右端やパソコンで作る文書の下部に余白を作っておくことです。話の要点はふつうに書き、余白には気づきや違和感を書き込みます。浮かんだ疑問もこの余白に残しておけば、あとで質問するときの材料になります。
メモそのものは、番号や見出しを付け、短い箇条書きでまとめ、重要なことを書き漏らさないのが基本です。メモがあちこちに散らばると、探すだけで手間がかかります。手帳やノートなど、置き場所を一か所に決めて管理します。
打ち合わせが終わったら、すぐにメモを読み返し、足りないところを書き足します。ここまでやると、すでに答えが書いてある内容を上司に聞き直すことがなくなります。読み返しても解けなかった疑問だけに番号を振り、一度にまとめて聞けば、上司の時間を何度も奪わずに済みます。
質問して教わった内容も、必ずメモに残します。メモを取る姿は、同じ質問を繰り返さないつもりでいることの表れとして上司に伝わります。最後に感謝の言葉を添えて、質問を締めくくります。
声をかけるときは最初の30秒で所要時間と頼みたいことを伝える
忙しい上司に話しかけるときは、最初の30秒程度で要件の見通しを渡します。伝えるのは、何分ほど時間がほしいのかと、上司に何をしてほしいのかの二点です。してほしいことは、判断なのか、助言なのか、確認なのかまで言葉にします。話の行き先が分かると、上司は聞く態勢を取りやすくなります。
声をかけるタイミングにも気を配ります。上司や先輩が明らかにバタバタしているときや、会議や外出の直前は避けたほうが無難です。長くなりそうな質問なら、いきなり本題に入らず、「5分だけお時間よろしいですか」「いまお話ししても大丈夫ですか」と、上司の都合を先に尋ねます。そのほうが上司も応じやすくなります。
相談の場合は、できれば前もって予告しておきます。「〇〇の件でご相談があります。明日、少しお時間をいただけないでしょうか」と伝えておけば、上司は答えをあらかじめ考えておけます。当日も、すぐに中身を話し始めず、相談してよいかを確かめてから切り出します。
頼み方の言葉にも工夫ができます。「教えてほしい」とだけ言うより、上司が受け止めやすい理由を添えるほうが伝わりやすくなります。たとえば、少しでも早く仕事で役に立ちたいという思いを一緒に伝える形です。質問の目的が前向きだと分かれば、上司も答えやすくなります。
話の組み立てはPREP法で結論から始める

質問や相談の中身は、PREP法の型に沿って並べると伝わりやすくなります。PREP法とは、結論のPoint、理由のReason、具体例のExample、そしてもう一度結論のPointを並べて話す型のことで、名前はこの4語の頭文字から来ています。Exampleには、理由の根拠となる具体例を入れます。
この型がビジネスで好まれるのは、結論を先に言うことで要点を論理的に伝えられるからです。締めくくりで結論を繰り返すため、聞き手の記憶にも残りやすくなります。使える場面は報告、プレゼン、面接、チャットでの文章と幅広く、結論を急ぐ忙しい決裁者への説明にも向いています。反対に、物語でおなじみの起承転結の組み立ては、仕事の説明には不向きとされることが多いです。
上司への相談に当てはめると、流れは次のようになります。最初に「Aへの対応方針を決めていただきたいです」と結論を言います。続けて、判断が必要になった背景を理由として話します。具体例として、すでに試した対策や、影響が及ぶ範囲を説明します。最後に、自分が希望する選択肢と、いつまでに判断がほしいのかを確認して締めます。
だらだらと話されると、上司は相手が何を言いたいのかつかめず困ってしまいます。
PREP法は信頼関係が浅い相手には機械的に聞こえる
PREP法にも弱点があります。結論から始まる端的な話になりやすいため、話し手の人柄や考えが伝わりにくく、聞き手には事務的で機械的に聞こえることがあります。まだ信頼関係が浅い上司に相談するときは、背景の説明を少し足すなどの配慮をします。
クローズドクエスチョンは仮説を示して正否を尋ねる三段階で組み立てる
質問の形は大きく二つに分かれます。クローズドクエスチョンとは、「はい」「いいえ」の二択で答えられる質問や、聞く側が用意した選択肢の中から選んでもらう質問のことです。 主導権を質問する側が握りやすく、返ってくる答えも予想の範囲に収まります。
答えの幅を絞らず、相手が思うままに答えられる質問がオープンクエスチョンです。 質問する側が思いつかなかった発想の答えが返ってくることがあります。その反面、質問の意図が相手に伝わらないと、的外れな答えになりがちです。朝ごはんを例にすると、今朝何を食べたかを聞くのがオープン、今朝パンを食べたかを聞くのがクローズドです。先に触れた5W1Hは、オープンクエスチョンでよく使う代表的な型です。
NTT東日本のビジネス記事は、クローズドクエスチョンが合う場面として、結論に賛成か反対かを確かめたいときと、話を一つの結論にまとめたいときを挙げています。同時に、相手に選択を迫る形になりやすく、圧迫感を与えるおそれがあるため、聞く内容には配慮が要るとしています。
マイナビニュースが紹介しているクローズドな質問の組み立て方では、最初に、何についての質問なのかを示します。次に、自分の仮説を示して、それが正しいかどうかを尋ねます。最後に、仮説が外れていた場合のフォローをします。外れたときは「ほかにも何か手を打たれていることがあれば教えてください」のように、オープンな問いを添えて相手に話してもらいます。選択肢を示して選んでもらう聞き方も、広い意味ではクローズドな質問の一種です。
どちらか一方に偏ると問題が出ます。オープンクエスチョンばかり投げると、判断を相手に任せているように見られることがあります。反対に、クローズドクエスチョンを立て続けに重ねると、相手は問い詰められているような気分になります。
報告は決まったことを、相談は決まっていないことを伝える
報連相(ほうれんそう)とは、報告と連絡と相談、それぞれの頭の一文字をつなげた言葉です。 組織で物事を決めたり、情報を行き渡らせたりするためのやり方で、日本の職場では標語や語呂合わせとして定着しています。読みは野菜のほうれん草と同じです。
報告は、指示や命令に対して、進み具合や結果を知らせることです。連絡は、事実や決定事項などの情報を関係者に共有することです。相談は、助言や意見を求めることです。
報告と相談の違いは、扱う事柄が決まっているかどうかにあります。報告で伝えるのは、すでに決定した事柄や進み具合です。相談は、まだ決まっていない事柄について指示や助言を仰ぐものです。相談のときは、起きた事実だけで終わらせず、自分ならどうするかという考えや案まで話します。これが相談の特徴です。
相談の前に、上司が何を求めているのかをつかんでおくと、方向性を誤りにくくなります。逆に、相談せず自分だけで判断して進めてしまうのも、うまくいかない原因になります。
報告で上司が知りたいのは、何があったのかという結論です。だから報告は結論から正確に伝えます。話すときは、起きた事実と自分の意見を分けます。確かでない情報には「私の予測ですが」と前置きを付けます。悪い報告ほど、早く上げます。
確連報は業務に入る前の確認から始める
確連報(かくれんぼう)とは、確認と連絡と報告の頭の文字をつないだ略語で、報連相を一歩進めた考え方です。 比較的新しい言葉で、解説はビジネス系メディアが中心です。報連相が、業務を進めたあとに結果を伝えることに重きを置くのに対し、確連報は業務に入る前の確認から始めます。
着手する前に方向性をすり合わせておけば、認識のずれや手戻りを防げます。自分なりに考えた進め方を示し、それで進めてよいかを前もって確かめるのが確連報の姿勢です。指示を待たずに自分で考えて動くようになるため、自主性も高まります。
質問メールは件名を15〜30文字にして【質問】などで種類を示す
メールで質問するときは、件名を見ただけで用件が分かるように具体的に書きます。件名の頭に【質問】や【確認】と付けて、メールの種類を示す方法があります。急ぎの案件や重要な案件なら、【緊急】や【重要】を付けます。件名の長さは15〜30文字程度が目安です。上司に優先して読んでほしいときは、件名に相手の名前を入れる工夫もあります。
本文は、まず宛名を書き、挨拶と名乗りを入れます。続いて用件を短く示してから詳しい中身に入り、結びの挨拶と署名で終えるのが基本の流れです。
締め切りが迫っている案件は、メールを送って終わりにしません。送信したあとに電話や口頭で一声かけ、すぐにメールを見てもらいます。
まとめ
上司に疑問点を質問するときは、自分の案を添えた確認の形にまとめ、結論から短く伝えます。聞く前には目的を一文で決め、5W1Hで足りない情報を確かめ、疑問はメモの余白にためて番号を付けておきます。声をかけるときは最初の30秒で時間と頼みたいことを伝え、相談なら前もって予告します。話はPREP法で結論から組み立て、クローズドな質問は仮説を示して正否を尋ね、外れたらオープンな問いで補います。新入社員が質問できなかった理由の1位は、上司が忙しそうで話しかけづらいことでした。また、上司が理想の部下に最も求めるのは、報連相がしっかりできることです。
準備をしていても、いざ上司の前に立つと言葉が出てこなくなる人もいます。上司への質問で頭が真っ白になる理由と緊張の対処法を知っておくと、仕事の疑問点を落ち着いて伝えやすくなります。








